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オレとご主人サマ  作者: 来宮悠里


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オレとご主人サマと新装備

「うーん、マッサージ程度にしかならなかったよー」

「……刺さったのか」

「針が負けないように頑張ってみた。ほめてー!」


 いや、冗談で言ったんだけど、まさか本当にやるとは思わなかった。どん引きです。


「ないわー」

「えー!!」


 普通やんねえし。あんなの刺さったら死ぬし。


「そういえば、クリス、できてるわよ」

「相変わらず仕事が早いね。助かるよ」

「いいわよー。やっと本人に会えたんだもの!」


 そういって、いい歳したおっさんが、見た目JK程度なオレに抱きつく。

 気持ち悪い。つーか。おっさんに抱きつかれるのは普通に嫌だ!


「やめろ! はなせ! きもいぞ!!」


 じたばたと暴れるが、おっさんの筋力が凄すぎて振りほどけないという。

 暑苦しい。暑苦しすぎる!!


「き、きもい……」

「おっさん……。オレの見た目は美少女だが、中身は男だぞ……おっさんに抱きしめられて嬉しいはずがない……」

「まあ、そうよねえ……」


 愕然としたおっさんに、事実をありのままに告げると納得してくれた。

 同じ境遇同士、簡単に想像ができることだ。ツーカーなのは良いことである。


「クリスゥ!!」

「ああ、うん。はいはい、後で酒場にでもいこーかー」

「愛してるわ!」

「僕の愛はソーマにだけだよー」

「つれないわねえ……」


 なんだこの、ガタイの良いおっさんと、似非爽やか青年の気色悪いやりとり。

 誰得だ。お腐れ様得か。もしかして、スィエとかミセリ辺りもこれを見て萌えるのか!? そんなんだったら嫌だなあ……。


「萎えたわ……」


 どっかりと、腰を落として、どこかの総司令官っぽい両手を組んで顎を乗せるポーズを取ったおっさん。

 おっさんそっちのポーズの方が格好いいから、カマキャラやめようぜ。

 なんて口が裂けても言えるわけがなく。


「で、今日はどれを持っていっていいんだい?」

「好きなの持っていっていいわよー。ソーマちゃんが本格的に迷宮潜るっていうのなら、あんまり露出がないのがいいわよー?」

「そうだよねー。可愛い服の方が僕もいいんだけど、流石に僕以外の男に襲われるとか考えるとねえ」


 我慢だ。オレの身の安全の事を考えてくれるんだから我慢である。

 だがしかし、まて。

 オレは愛情を持ってご主人に抱かれた覚えはたぶん一回もない! 性欲が溜まってたとかそう言うときにしか奴を利用したことはない! だいたい襲われるのはオレの方だ。

 あれ……、襲われる方がおおいなら、やっぱりそういう系の装備がいいんじゃね。

 もしかして、格好いい系の服きれる……!?


「露出少なめで!!」


 ここは押し通す! もういやだ! あんなひらひらした露出過多な服はこりごりだ! スカートよりズボンがいい! 可愛いより、格好良いっていわれたい! 愛玩扱いはゴメンだ!!


「これなんてどう?」

「うーん……もうちょっと赤みの強いのない?」

「ふうむ……そうなると、こっち? アダマントータスの外皮から作った奴なんだけど」

「この前渡した、クリスタラフの爪の奴は?」

「そっちはロッドにしちゃったわよー」

「あれそうだっけ」

「そうよー。ソーマちゃんに冒険用の装備をーって事で相談したじゃないー」

「あー……あの時結構呑んでたからなー」


 ねえ、なんでオレハブられてんの。

 かなりさびしいんですけどー。

 そんなんだったら、装備いらねーぞ!!


「オレを無視するなああああああああああああああああ!!」


 泣くぞ、コラ。ぐすん……。


「あ、ごめんごめん。えっと、ソーマはどれがいい?」

「……露出の少ない格好いいので」


 股下何センチのミニスカより、膝下何センチのスカートがいい。穿くならな。ズボンが一番だけど、見る限りそんなものないし。


「むむぅ……難しい注文だ」

「難しくねーよ!?」


 困惑するご主人。そんなに難しくねーよ……。


「この中だとどれがいい? お金の心配はいらないわよ!」

「あー……そうだなあ」


 まるで、我儘の子供を相手にするかのような対応だ。

 確かにオレも大人げなかった。無視されるのは辛いんだぜ。


 ざっと見渡した中で、目を引くのは黒地に赤の装飾が施された丈の短いマントみたいな奴。オレがこっちに来てすぐ奪われたけど、ご主人が取り戻してくれた服と合わせると、ちょっとどこぞの人間を召喚した落ちこぼれ魔法使いみたいな感じになりそうだ。まあ、あの服もスカートだけどな!!

 それ以外めぼしい物はない。オレの金銭に触れないだけなんだけど。

 流石にフリルとかレースとか大量にある奴や、リボン一杯の少女趣味のものは嫌だ。


「これくらいだな」


 最初に目にとまったマントを指す。


「全く……お目が高いわねえ」

「そうなのか?」

「そうなのよ」


 おっさんが呆れた様に溜息をついた。


「それ一個で、ソーマちゃん用に作った服がまかなえるレベル」

「ほー」


 あー……そういえば、オレの服って全部特注だから相当金かかってるんだっけ。


「察した。たけえのか。ならいいや。別ので」

「クレア、それ買うよー」


 オレが引き下がる言葉と被せるようにご主人が買うと言った。

 いや、そんな高いならいらねえよ!


「ほんとにー? ソーマちゃん大分渋ってるけど?」

「お金の管理はソーマがやってるけど、最終的に買うのを決めるのは僕だしね。なんたって、ソーマは僕の所有物だから。ソーマの意思なんて関係無いよ」

「都合の良いときだけ、奴隷扱いするのねー」

「褒めてもお金と素材くらいしかでないよー」

「はいはい……。足りない分は後日請求ね。後ソーマちゃん用に調整するからー」

「ありがとー!!」


 なんか複雑だ。

 オレの意見は無視されたのに、オレの欲しい物が手に入るこのなんとも言えなさ。解せぬ……。


「じゃあ、ソーマちゃんこっちに来て」


 促されるがままにサイズを合わせられた。

 帰る間際に、あれの効果を聞いてびっくりした。

 今までのもの全部のせした上に効力二割増しだそうな……。いや流石にそりゃあたけえわ……。うん。

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