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オレとご主人サマ  作者: 来宮悠里


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オレとご主人サマと逢い引き

「ご主人、自分の足で歩いてくれないかな……」


 重い。身長は百八十オーバーで、普段からフルプレートアーマーを軽々と着こなすご主人だ、素の体格も相当いい。多分体は殆ど筋肉なんじゃあないか……?

 だから、ひたすらに重い。

 ああ、ちくしょー、この重さもあんまり嫌な気がしないのがなあ……。


「ソーマが必死に僕を運んでるのが可愛いー」

「おう、酔っ払い。言っておくが階段はもう無理だからな」


 マークが早々にスィエとミセリを部屋に運んでいる間に、オレがご主人を運べたのは宿の階段までだ。正直オレだって酒に酔ってるし、足取りも悪い。寝ようと思えばここで眠ることが出来る位だ。


「じゃあ、僕が運ぶー」

「うおわっ!」


 へらへらした表情のまま、ご主人がオレを抱え上げる。またお姫様抱っこだ。軽々と酔っ払いに持ち上げられると屈辱だ。


「おーろーせー!」

「いーやー」


 じたばた暴れても、全くもって動じない。本当にコイツ、ドMの癖にがっしりしてんだよなあ。

 つーか、なんだよいーやーって。ガキかっ!

 はあ……、なんだろうなあ。あんまり嫌な気がしないのも事実だ。


「ったく、しょうがねえから、丁寧に運べよ」

「もっちろーん」


 千鳥足もいい所な様子でご主人が階段を一段一段ゆっくりと上っていく。たまに体を壁にぶつけながら、へらへらしてて。正直気が気じゃあない!


「おい、ご主人やっぱまて、一階降りてくれ」


 酔っ払いが揺らすから、完璧に酔った。吐く。ついでにいうとおしっこしたい。


「んー、どうしたの?」

「お前が揺らすから気持ち悪くなってきた。後ついでに下もやばい」

「ここでしちゃえばー?」

「屋敷だったら遠慮しなかったが、ここは酒場だ。できるわけねーだろ!!」


 おえっ……。大声出したら本格的に波が来やがった。やばい、上も下も垂れ流すぞ……。ええと、流石にこの醜態は見られたく無い。

 ちなみに言うと、用を足すのはそこら辺でだ。まあ、水はなんとかなるからいいとして……


「うーん、じゃあ、そこら辺の木陰までいこっかー」

「一人で行ける」

「もー、途中で粗相して、狼狽えるのはソーマなんだから、僕がつれていくよー」


 理屈になってねえ! ああくそう、久々にご主人と話をするから調子が狂う……。

 つーか、まじで気持ち悪い。


「じゃあ、もうつれていってくれ。それまでは我慢してやる!」

「はーい」


 そして、上も下も完全に垂れ流して、幾分かスッキリした。

 口をゆすいで、下も洗って、粗相の後は大量の水で洗い流して、酔い覚ましにミント的な香草を噛む。


「凄い音だったねえ……」

「聞いてんじゃねえよ、クソッタレ」


 これ、そのままだったら今日の夜が大変だったな……。シーツびちゃびちゃ案件……。はあ……奴隷時代に開発された体が恨めしい。何もかもが緩くされてるからな……アソコはご主人のチンコのせいで緩くなった訳なんだが……。はあ……。


「ご主人」

「なあに?」

「面貸せ」


 はいはいといって、オレの方に顔を向けるご主人。正直酒臭い。

 オレはご主人の顔を両手で挟み込んでキスをした。したかったからキスをした。

 ロマンもへったくれもない、ただ唇同士を触れ合わせる簡単なものだ。舌を入れるのはいやだった。酒臭いし。どうせ夜ヤッてるときはそういうの気にしないんだし……、たまには子供みたいなことをしてもいいだろう。



「びっくりしたなあ、もう!」

「……いいだろ別に。昼間はしないって言ったけど、しようぜ」

「いいの!?」

「溜まってんだろ。オレだって、人恋しい。ホントはスィエとが一番良いけど」

「あはは、ソーマから誘ってくれるなんて思わなかったよー! じゃ、今日は頑張っちゃう!」

「お、おう……お手柔らかにな」


 ご主人が笑顔で手を差しだしてきた。

 オレは溜息をつきながらその手を取る。一緒にベッドに行こうぜっていうサインだ。もうなんか覚えたぞ。幾度と無く屋敷でやってるからな……。


 正直、その日は久しぶりだって事もあって燃えた。それにえも言われぬ充足感があったし、ヤッてる最中ボロ泣きして、ご主人を困らせた。

 しょうがないだろ……いつもの日常が戻ってきた気がして安心したんだから。

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