オレとご主人サマがいる朝
ああ、凄く久しぶりによく寝た気がする。
というか、苦しい。なんだこれ。何があった……?
つうか、くせえ。まじ野生的なニオイがする。ヤバイ。鼻が曲がりそうだ。
あまりの刺激臭に一気に目が覚めた。
自分の体を見て、驚く。いや、やべえって。何日風呂入ってないんだってレベルできたねえ。爪に垢らしき物が溜まっていやがるし。髪も目茶苦茶べたべたじゃねえか! そして、目の前ですやすや眠る優男も相当だ。
目の前に眠る優男……?
「ご主人……?」
口はくせえし、体もくせえ、着てる服そのままだし、泥汚れがマジでひでえ。
辺りを見渡せば、プレートアーマーのパーツがほったらかしてあるし。なんだこれ……。えっと、はっきり分かるのは、ご主人が帰ってきたことだけだけど。
「おう……、なんだこれ……」
頬を伝う涙。いや、安心したとかそんなつもりは全くなかったのに。なんだよこれ。オレ、ご主人が戻ってきてほっとしてるのか……?
そんなにオレはコイツに依存していたのか? いや、確かに一人は寂しかったさ。
この世界に着て、なんだかんだで一人になることが少なかった。奴隷時代はクリムが居たし、それから先はご主人が居た。三週間あまり一人って言うのは実は初めてだったんじゃ……。
おおう、まじか。驚きだよ。この世界に来てもう半年くらいになるけど、一人って実は初めてだったのか……。
「ご主人、生きてる……か?」
ゆさゆさと揺さぶってみる。あまりにも酷いニオイはなんかもうなれたわ……。
安らかな吐息が聞こえて安堵する。
生きてる。ご主人達が帰ってきた。今回は無理だろうって思われてた討伐を終わらせて帰ってきた。
「ごしゅじん……」
また、涙。心が弱りすぎだろう、オレ。
くそう、ワンオフで注文していた服に文句を言おうと思ったのに、そんな気持ちにもならねーじゃねえか……。
「起きろよ、ご主人……」
「んー、なあに、もう。僕昨日帰ってきたばっかりなんだよー?」
「お前……オレがどれだけ待ったと思って……」
「うん、そうだね。待たせてごめんね。それと、ただいまソーマ」
「おう、おかえり、ご主人。口がくせえから風呂に入るぞ」
「ソーマも酷いね、綺麗好きなのに」
「十日くらい門の前で待ってた」
「そっか」
「あとノービスキラーを一人で倒した」
「すごい!」
「話したい事あるから、風呂入ろうぜ今日くらい背中流してやる」
「ほんとにー!?」
「おう、口くせえから、しゃべんな!」
ベッドを抜け出して、着替えを二人分もって、風呂場に向かう。
ざっと水で洗って、埃を流して、火と水の混合魔法でお湯を張ってしまう。
湯気が立つ浴槽。うん、これも久しぶりに見た。本当に風呂に入り忘れてたらしい、通りでくせえはずだ。
「ソーマ、照れ隠しはもっと分かりづらくやってよー。というか、ソーマも相当だよ?」
「だろうな。はあああああ……。歯磨きしよ」
歯を磨いて、服を脱いで、お互い裸になって。
「おう、いきり立てるんじゃねえ。今日はそう言う気分じゃ無い」
「しょうがないでしょー、僕起きたばっかりなんだよー!?」
「ああ、朝立ちか。なら仕方ないな……。んっ」
オレは何も言わずに布を渡す。
石鹸は新しくて、高い奴を出した。今日くらいいいだろ。花の香りがする奴だ。
「はいはい。お姫様」
「姫じゃねえ、奴隷だ」
「そーだねー」
体の隅々まで洗われてスッキリした。結構の量の垢がでた。いつもならご主人が触るとエロイ気分になるんだが、今日は全然だなあ……。なんつーか、まじで安心しか無い。
変わって、オレがご主人の体を洗ってやる。萎えないチンコまで隅々までだ。いい加減静まれよそれ。
特に会話も無く体を洗い終えて、お互い湯船に浸かる。
「くぅぅぅぅぅ、生き返るぅぅぅぅ!!」
「気持ちいいねえ!」
「お前のチンコがオレの尻に当たってるのを除けばな……」
「だってー、遠征中一切そう言うことしなかったんだよ!? しょうが無いじゃん溜まってるんだよ!」
「そうか……だけど今日は我慢してくれ、マジでそう言う気分じゃ無い」
「うん。居なかった間の話一杯しようね」
「うん……」
静かに、小鳥のさえずりを聞きながら、逆上せるまで静かに風呂に浸かった。
なんか、物凄く落ち着いた。