オレとご主人サマと大掃除
※ただしご主人サマはでない
「そういえば、ソーマ、ギルドカードって今持ってる?」
「持ってるけど、どうして?」
スィエが風の魔法で埃を飛ばしてるのを横目にオレは拭き掃除に精を出す。
便利だよなあ、威力調節ができる中等風魔法のストームって。オレも早く覚えたい。
「おかしいのよ」
「何が?」
「んー、無詠唱で魔法を扱えるのに、魔力がすぐ切れることが」
「そうかー?」
うーむ、オレとスィエの魔法の使い方の違和感の正体が分かるのかな。
正直、あんまりよく分かってないしな。ご主人に自衛の為に魔法くらいは使えた方がいいよーって渡された魔道書をさらっと読んで使えるようになったくらいだからなあ。
「ああ、はい、カード」
ギルドカードはドッグタグくらいの小さな物に色々と転写されている。これを無くしたらいけないし、これが見つかると言うことは所持者の死を意味する。
見方は簡単で、カードにほんの少し魔力を通すだけだ。
あまり人様に見せるような代物でも無い。
「いいの、そんなにホイホイ渡して」
「別に見られても困るもんじゃねーしな」
見れるのは先天素質と職業素養、それに後天素質。後は数値的なものはあるけど、あれその日の体調によって変わるからな。興味本位で月の日に見たらバステかかった見たいに低かったぞ。
「うわあ……なにこれ……」
「あんま高くないだろー?」
「え、いや、これを高く無いって。えっ」
なんかスィエが驚いてる。
いやだって、魔力値三百とか低いだろ。アレだぜ、魔法使いの最大MPが三百みたいなもんだぜ?
「魔力値三百って十分規格外クラス」
「はあ!? いやいやいやいや、体力とか普通に一万超えてるだろ?」
「それ、クリスだけだから。はい、これ私のギルドカード」
既に開かれたギルドカードに目を通す。
突出してる物は無いものの、体力は八百で魔力は五十とかだ。
えっ……?
「数値はランクによらないし、魄力で上がるのは他の部分だからね、体力や魔力って言うのは先天的なものだよ? 知らなかったの?」
「おう、まじか……体力二百の魔力三百って相当良かったんだな……」
おじさん知らなかった。いや、日本でもおじさんって歳じゃなかったけど。
じゃあ、なんであんなにすぐ魔力切れ起こすんだ!?
「えーと、じゃあなんでだ……?」
「ソーマ、一度魔法使ってみてよ」
「おう、いいぞ」
オレはどうせだから、バケツの水を替える為に中身を空にして、そこにウォーターボールで水を作り出す。
「ああ……」
スィエには何か分かったらしい。オレには全くもって分からない!
「えっと、これ、長くなるから夕飯食べながらで良いかな?」
「まじで……。そんなに酷いの!」
「だって、普通一から十まで自分の魔力で魔法生成する子いないんだから!」
いや、しらんし! 俺以外に迷宮で魔法使うの見たのは、スィエとミセリくらいだし……。魔法のお手本が居たわけじゃないんだぞ! ご主人は魔法使わないしな! 光輝の剣ってのが消費してるみたいだけど、切れた様子は見せないからなあ。
「ソーマってホントに何も知らないのね」
「まあな、自慢じゃ無いが、この世界にきて即奴隷落ちして、一か月後にご主人の慰み者だからな!!」
「一か月ってなあに……?」
「おおう……」
そうだった、この世界一日の概念はあっても、一週間とか一か月とかの概念が無いんだった……。すっかり忘れていた。
カレンダーとかないからなあ。
まあいいや。魔法についての詳しいことは飯の時にでも聞こう。
なんか相当おかしいことやらかしてたっぽいしな。
「まあ、一か月ってのはさておいて、スィエ、飯どうするの? 家で食ってく? そしたら媚薬買ってくるけど」
「ソーマはなんで、そうゲスな事いうかなー」
「お前、オレはスィエが好きだってずっと言ってるだろー」
「えー、あれ冗談じゃ無かったのー?」
「マジマジ、大マジだって」
「じゃあ、クリスはー?」
ううむ、ご主人はなあ。なんというかあれだよなあれ。
「お互いの性的欲求を満たせるパートナーかな……? いや、オレ奴隷だけど」
「ふうむ、そっかー。へー、そっかー」
いや、スィエ? 何をニヤニヤしてるのかな。
オレには訳が分からないんだが。だってお前、オレには穴があって、性欲もある。ご主人には棒があって性欲ある。ならヤルこたぁ一つだろう。
いや、しょーじき、オレも入れたいよ? でも無いじゃん? じゃあもう、代償手段で入れられるしかないじゃん? そういうこったよ。
ということを説明しているにも関わらず、スィエはついぞニヤニヤ笑いを崩さなかった。
くっそー。女って恋バナホント好きだなあ!! これは世界が変わってもかわらん事実なのか!