オレとご主人サマと貴族位
「おいご主人、起きろ!!」
「いたっ、痛いよぉ!! なあに、もう」
ううむ、ランクが上がったお陰で、本気で蹴りやれば痛がってくれるようになったぞ。
「朝だ。起きろ。後痛がりながらオレの足に頬ずりするな、ニオイを嗅ぐな気持ち悪い!!」
「ええー、そんなー! 良い匂いなのにー!」
「マジで気持ち悪い!!」
「いったぁっ!」
オレの全力の蹴りが、ご主人に効いてる……!
やばい、感激だ! いつもお世辞で痛がってくれてたのはなんとなく分かってたけど、これはモノホンだ……!
「おう、今日は屋敷の大掃除だ」
「ええー、いいよー。ソーマがいつも使う所だけやれば十分だよぅ」
オレがいつも使う所。
台所、ご主人の部屋、風呂場。後見栄えの為に玄関だけど、流石に他の客間とか大広間とかの埃が凄まじい事に。
ちなみにオレの部屋もあるにはあるのだが、衣装部屋になってるし、寝るときは大体ご主人と一緒だからな。時折一人で寝たいときとかは自室に行くけど。
毎夜毎夜髪のニオイ嗅がれるのが盛大に気持ち悪いが、抱き枕が欲しいと言われたら、奴隷の身分上断れないだろ……。
いや、正直に言おう。流石に一人は怖い。ぶっちゃけ、怖すぎて夜一人で、トイレにいけずに漏らしたことがあるレベルだからな!!
だから、こんなクソッタレなご主人でも近くに居るだけマシなのだよ……。ホントクソッタレだけど、空気くらいは読んでくれるからな。イケメンはマジで特だ。
「流石に物置とかの埃がひでえから……。ハウスキーパー雇えよ。名誉貴族サマ」
ご主人は国から名誉貴族の称号を貰ってる冒険者だ。
ドラゴンや魔神と言ったこの世の脅威となる魔物達を最前線で戦い退けたから、与えられたらしいのだが、ぶっちゃけ信用がならん。
オレがこっちに来る前の話らしいし。
「えー、お金が勿体ないよー。ソーマいつも日銭稼いで来いって僕蹴り出すから家計危ないのかなーっていつも思ってるんだけど!!」
「いや全然? 貯蓄だけなら普通に一千万くらいある。お前が毎回迷宮に潜る度に十万二十万って稼いでくるから生活には困ってないぞ」
素材や、貢ぎ物、魔物が蓄えてた冒険者の遺品とかを全部売り払えば五千万くらいになるくらい貯蓄はある。
現金だけなら本当は二千万だ。
それで毎食外食をして二人で生活するのに必要な月のお金は宿代込みで二十万程度だ。持ち家だから宿代が掛からない分オレ達の生活費はもっと少ない。
実は結構裕福なのである。
「なぁっ!! そんなにあるならいいじゃん、もー」
「よくねえよ! お前、結構ぽこじゃかオレに服買ってくるから、時折支払いの催促が屋敷に来るんだよ!! なんだよ一着十万とか。そりゃあ良い物だけど、着払いで払いたくねえ額だぞ!!」
「ええ、安いじゃん。素材の調達からお願いしたらその十倍はするよー?」
「素材の心配はしてねえ。つうか、普通のでいいから!! そんな幻想魔獣の素材使った服とかいらねえから!!」
マジで要らない。普通の服で良い……。普段着は普通のでいいんだよ!!
というか、転生したときに来てた服が一番……。あれ、着せるために設定したのオレだし。時折市場を見回るけど出回ってないっぽいんだよなあ……。
「えー、クローネが凄く残念がるんだけど」
「そんなことはどうでもいい! というか、ちげーよ、服の話じゃねえ! ハウスキーパーだよ! 雇えよ、毎月たっぷり給金払っても問題無いくらい蓄えはあるんだよ!」
「んー……そんなに言うなら、奴隷一人買う?」
「まじか……え、この家に住まわせるの?」
ううむ……屋敷に常に誰かいるってのは、ちょっとあれだなあ。ゴロゴロできないし……。それにヤッてる声は聞かれたくねえな。
静かだから存外声って屋敷内に響くんだよね。
「それでもいいし、解放して雇い上げでも。解放金支払い終わるまでは最低限の生活費しか渡せないけど。冒険者から落ちた奴隷なら迷宮に潜れば地力で稼いでくるでしょー」
そんなものなのか。
まあ、宿代は馬小屋なら数百レベルだし、粗悪なところで千ちょっとだったか?
泊まったことが無いからなんとも言えないけど、街の宿屋の看板見る限りそんな感じだった気がする。
「んー、通いにした方が助かる。あのなあれだ、流石にヤッてる時の声は聞かれたくねー」
「ソーマの声は可愛いからねえ!」
「うるせえ! 出るもんは出るんだから仕方ねえだろ!!」
あーくそ……思い出して恥ずかしいぜ……。
「じゃあ、掃除が終わったら一緒に見に行こうか」
「明日になるな」
「そんなに!?」
「今日一日じゃ終わらないかも知れない」
「ほんとに!?」
なんで喜んでるんですかねえ、このクソご主人は。
「わあい、今日はソーマと一緒だー!」
ああ、はいはいソーデスネ。
扱き使ってやろう。それが一番ご主人の為だな。