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オレとご主人サマと朝の一時

「おーい、ご主人ー。早く起きろー。おきねーとまた迷宮に潜れねーぞ、食いっぱぐれるぞー」


 オレはベッドで眠りこける主人を足蹴にする。


 ……オレは今目の前に居る、優男――クリス・ディルムッドの奴隷として買われた異世界転生者である。しかも元男の日本人だ。名前は、五条翔馬――こっちの世界の住人からはソーマと呼ばれている。


 いや、酷かった。

 死んだと思ったら、異世界に居て、起きたら女になっていた。

 着の身着のままの状態で、呆然としてたら盗賊に襲われ、処女を確認された上で奴隷商館に売られた。あそこを目一杯広げられて、何秒かそこを見つめられてたら確認がすんだんだよ。不思議だよな、異世界。

 その時の盗賊共の言い分が酷かった。


『ふひっ、処女はめんどいから、売って金にして極上の娼婦を買いましょうぜ、げへへ』


 とかなんとか言ってたんだったかなあ。生娘は極上の娼婦以下ですか、そうですか。オレは断然処女の方がいいんだけどな! いや、ちょっと開発された経験の浅い子もいい。熟練の者はちょっと想像できない。まあ、そんなオレは童貞で生涯を終えたわけですが。さらばマイサン。


 マイサンへの別れを告げていると、あれよあれよという間に、売られて、性技を仕込まれた。処女のまま。意外と女の体も悪くないと仕込まれた。だが一度で良いから使いたかったマイサン。

 そして売りに出された。処女のまま。


「ああ、小さなあんよが僕を踏みつけてくれてる。これは天使の施しかっ」

「うわ、気持ち悪っ。人の足に頬ずりすんな、きめえ!」


 そして、買われた先がこの変態ご主人である。

 ゲシッゲシッ。本気で蹴りを入れるけど、全くもって効いていない。

 それもそうだ。このご主人、ドMを極めすぎて、世界最硬の異名を持ってる、防御バカだ。

 Sランクのメインタンク。巷じゃ、守護の盾なんて呼ばれてちやほやされているが、冒険者間では、ドMのクリスと呼ばれている。らしい。


「ああん、ソーマぁ、僕をもっと踏んでおくれよぉ、その天使の声音で罵っておくれよぉ。奴隷でしょー? 僕の命令聞いてよー」

「気持ち悪いなあ、ホントに。買ってくれたことに関しては感謝してるが……」


 オレを買った主人は有名な冒険者だ。金も腐るほど持っている。さっきも言ったけどランクはSで、ドラゴンのブレスにも耐える頑強さ。武勇伝の中じゃあ、魔神の一撃にも耐えきったとかって逸話もある。

 まあ、付いてるスキルがドMだから、しょうが無いよな……。磨けばそりゃあ頑強になるわ。快楽を得る為だけに死地に飛び込むとか、すげえよ。オレはしたくない。


 しかし、ホントコイツは見た目はいいのに、性格で損してるよなあ。こいつの性格知ってるのって、オレと上位冒険者くらいだけだけど。

 一度オレのランク上げの為に随伴させて貰ったけど、やばかった。Sランクの女性冒険者のクリスを見る目がやばかった。汚物だ。汚物を見る目だった。

 その視線を浴びて、恍惚としてたクリスは本当に見るに堪えなかった。正直言う。気持ち悪かった。


 男の……今は女だけど、オレから見ても、コイツは西洋人顔でイケメンだし。悔しいけど。

 ただ、一緒に町を歩くと周りの視線が鬱陶しい。何アイツ、クリス様の側をしたり顔で歩いてとかっていう陰口が時折聞こえてくる。正直陰口はキツイ。本性知ったら絶対引くくせに……。


「ああ、ソーマは今日も良い匂いだ」


 ドMで匂いフェチとか救いようが無いと思います。頬ずりしながら足のニオイ嗅ぐなよ、気持ち悪い。

 オレの今の格好だって、コイツの趣味が多分に反映されたものだ。

 きわっきわのミニスカートの丈はニーハイの絶対領域を絶妙に見せる長さだし、肩だしのトップスはふいに見える脇チラがいいらしい……。正直、コイツの服装の趣味とかチラリズムの趣味は分からなくもないから、辛い。中々にオレの趣味と合致していやがる。


「離れろ、気持ち悪い。夜伽ならやってやるが、それ以外はのーせんきゅーだ!」

「えー……僕はソーマといちゃいちゃしたいだけなのにぃー」

「オレは男といちゃつくつもりはねえ!」

「こーんなに可愛いのに、女の子が好きってきみも変わってるよねえ」


 そう、オレがコイツに見初められた理由は、奴隷商館で唯一媚びなかったからだ。

 奴隷たちは早くここから出たいが一心で、愛想を振りまく。

 売れる物を売り、特技をひけらかす。それが買われるための極意だって先輩奴隷に教わったけれど、売れる物も特技も持たないオレはどーしようもなかったわけで。

 それに男に興味が無かったしな。できればお姫様とかに買われたかった……。それだったら思い切り媚を売ったのに!


「だから、オレは元々男だって言ってんだろ!?」

「こーんなに可愛いのにー? 僕一目惚れきみ買ったんだけどなあー。男だなんて信じられないよー」

「ああ、そうかいそうかい」


 まあ、確かに今のオレは客観的に見れば可愛いよ? 正直日本に居たら、オレの理想ぴったしだよ?

 高くもなく低くもない身長に、無駄に大きくもなく、かといって慎ましやかすぎない程の胸。この世界じゃあ珍しい黒髪の長髪だし、クリスに言わせればしっとりと濡れたように艶やかな絹糸のような黒髪が美しいだそうだ。怖気が走る。


「それでー。そろそろパンツにはなれたー?」

「おう、つまむんじゃねえぞ、エロドMご主人。玉潰すぞ」


 女物は穿いてないからな。男物のパンツは隙間から見えるが、オレは断然こっちの方がいい……。女物のパンツはまだ慣れねえ! 何あのぴっちり感。不愉快というかなんというか……。マイサンがあったことを忘れてしまいそうでちょっと困る。


「えー。潰しちゃうの。潰してくれるの!? いいよ!! その痛みはまだ味わったことがない!! ソーマの回復魔法で直してくれるならいくらでも潰してくれていいよ!?」

「ひえっ……こわっ……」


 どん引きである。

 正直ついて行けない。

 しかも、オレの回復魔法って初等だから、玉潰したら絶対治せねえぞ。治せたとしても何時間かかるんだ。その間、コイツのチンコ握っとけと? うげええええ……。


「ソーマ? 気分悪いのかい?」

「おう、お前のチンコ握るの想像したら一気に気持ち悪くなった。吐くぞ」

「さあ僕の胸においで!!」

「お前に、NGはないのか!!」

「ソーマに限ってはないね! ソーマの為だったら神罰にも耐えてみせる!」

「きもい……」


 マジできもい。どうして、オレこんな奴に買われたんだ……。


「さあて、おはよう、ソーマ。今日も頑張ろう!」

「おう……オレはもう疲れたから一眠りしたいよ……」

「眠るなら、僕のベッド使ってもいいよ!」


 勘弁してくれえ。どうせオレの匂いが付いたベッドシーツに寝転がりたいとかそんなんだろ。死ねばいいと思う。間接的に陵辱されるこっちの身にもなれよ!


「ったく……。ほら、弁当作ってあるから、さっさと日銭稼いでこい!」


 寝間着のご主人の尻を蹴りやって部屋から追い出す。

 はあ、早くいなくなりやがれ、クソご主人。掃除ができねーだろうが。

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