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8.ボカディーリョ売り、決戦の日へ

「それでは、私の仕事はこれで終わりだ。あとは頼んだぞ」

 アランはホテルのロビーでボディーガード仲間と話していた。

 今日は某国国賓の表敬訪問があり、無事警備が終わった。アランの契約はその警護で終わりだった。国賓が国に帰るまでは別のボディーガードが担当する。


 アランは仲間に別れを告げ、荷物を持つと地下の駐車場へ向かった。

(あとは、こちらの仕事を片付けるだけだ)アランは車の前に立つ。


 すると、出口方向に止まっていた一台の車のヘッドライトがついた。シルバーのベンツだった。

(今日一日ずっとつけてきたのは知っている。いよいよ決着ということか)アランは車に乗り込んだ。


 先にシルバーのベンツが発進し、続いてアランが車を出す。

「なるほど、ついて来いということだな。自分たちの死に場所を選ぶがいい」アランはベンツの後ろを追う。

 陽が落ちた街は、街灯やネオンが光る。ミラ達は街中の大きな公園に向かった。車通りが少なくなり、両側を芝生の小さな丘と木々に囲まれた道を通る。ポツリ、ポツリと外灯が光るその道にベンツは止まった。


 間隔をあけて、アランも車を止める。ミラ、マルコ、芦田は素早く車を降りると、木々の中へ入っていった。アランはそれを確認すると、ゆっくりと車を降り、後を追った。



「いつまで、追いかけっこをやるんだい?」アランが叫んだ。


 ミラ、マルコ、芦田はアランを待ち構えている。


「アラン!ひとつ教えておいてやろう!この国で銃を使うとやっかいな事になるぞ!」マルコが叫んだ。


「誰かしらんが、銃無しだと俺に勝てると思っているのか!?」アランが叫ぶ。


 ミラが、前に出る。

「私達は、あなたに根絶やしにされた街の人間よ!生き残った私達が証拠よ!」

 ミラはそう叫ぶと同時に飛び込み、前蹴りを出す。アランはかわすが、これはフェイントだ。前蹴りの勢いで踏み込んだミラはアランの顔面に左右のワンツーを飛ばす。アランはこれもスウェーでかわす。しかしミラもこれはフェイントだ。ミラの狙いは次の金的蹴りだ。流れに乗った素早い金的蹴りをミラが放つ。

 アランはまるで予測していたかのように、両手でブロックした。


 ミラの顔に動揺が走る。


 アランはミラの腹に前蹴りを飛ばした。ミラは大きく後ろに吹っ飛ぶ。


「おい、一応俺は現役だぞ」アランは不敵な笑みを浮かべた。


 横に回り込んでいたマルコがアランの腰へタックルする。

 アランは素早く腰を引き、マルコの首と腕をロックする。


「年寄りは寝ていろ!」アランは膝蹴りをマルコの顔面と腹に数発入れる。

 マルコはその場に崩れ落ち、アランは更にマルコの顔面を蹴り上げる。


(はぁー...やっぱり、行くしかねえか!)

 芦田は横からアランに飛び込む。と同時に握っていた土をアランの目をめがけて投げる。

 顔をそらすアラン。(よし!)芦田は渾身の力でアランの金的めがけて蹴り上げた。


 しかし、その足は膝でブロックされた。

 そのままアランはプロレスのラリアットのような形で芦田の顔面を腕で殴り、そのまま体を浴びせ倒す。

 アランは仰向けになった芦田の顔に拳を打ち込む。顔面を殴られながら、芦田はなんとかアランの体に両腕をまわす。

 そして、なんとかアランのジャケットのポケットにスマートフォンを忍び込ませた。

(へへ、やった!これで俺の役目はひとまず完了!)


 芦田に馬乗りになっているアランの顔面に、ミラが蹴りを入れる。

 転がり立ち上がったアランがミラの前に立った。

 ふらふらとマルコが立ち上がり、アランの後ろにまわる。ミラとマルコはアランを挟んでいるような形になった。


 皆肩で息をしている。


「いよいよ、クライマックスかい?」アランがジリジリと間合いをはかりながら言う。


「どちらのハッピーエンドになるのかな?」アランがそう言った時、マルコがアランに組み付いた。

 そのまま羽交い絞めにする。同時にミラがアランのボディにワンツースリーフォーのパンチをコンビネーションで入れる。ミラは一度後ろに下がり、アランの懐にステップインして拳を放つ。


 ミラのステップインに合わせて、アランはマルコを一本背負いのような形で前方に投げる。

 マルコは背中から落ち、ミラはマルコの体が当たりよろめいた。


 その隙にアランはミラにタックルを放ち、浴びせ倒す。

「キャッ!」ミラは仰向けに倒れ、荒い息のアランが覆いかぶさる。

「これで、ハッピーエンドだ」アランはホルスターに収まっている拳銃に手をかけた。


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