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3.ボカディーリョ売り、おいてけぼりを食らう

「そこで降ろして」ミラは言った。

「まだ駅じゃないよ」芦田はそう言いながら、車を脇に寄せた。


 車が止まると、ミラはすぐにドアを開けて降りて後ろに走っていった。

 ワーゲンバスの後ろにはいつのまにか、シルバーのベンツが待っていてミラはその車に乗り込んだ。

「なんなんだ!?」芦田は声に出して、走っていくベンツを見送った。

(一体何なんだ。始めからベンツに送ってもらえば良かったじゃないか)


 芦田はそう思いながら、サッカー場へ引き返した。



 サッカー場へ着いて、また開店の準備をしていると、スーツを着た西洋人が慌しく芦田の前に走ってきた。

「あの女はどこへ行った!?」飛び掛る勢いで男は芦田に尋ねる。


 芦田は、隠さず説明した。初めて会った女性であること、駅の方に送っていったこと、その後別の車で走り去ったこと。

「くそっ!」男はそう言ってスタジアムへ戻っていった。





 西洋人の男は、某国国賓のボディーガードだった。この日某国国賓がサッカー観戦をしていた。男は国賓のそのボディーガードをしていたのだった。

 試合が始まってからしばらくして、国賓の席の一番近くのトイレから煙が出た。

 試合は続けられたが、辺りは一時騒然となり、徹底的に周辺の安全を調査した。


「アラン、ちょっとこっちへ来てくれ」アランと呼ばれた男がトイレに向かった。芦田やミラと話した男はこのアランだった。


「発煙剤か...」アランが発煙元を確認する。


「とりあえずは問題はないが、辺りを調べろ。まだなにか仕掛けられているかもしれない。それから、スタジアムの周りの不審者を調べるんだ」

 そう言って、アランは外へ出て行ったのだった。


 外へ出たアランは、芦田とミラに出会う。商売の邪魔をするなとミラに言われて、アランはその場を立ち去る。

 ゲートに向かいスタジアムの外周を一回りしたアランは、ジャケットのポケットに覚えのない紙が入っていることに気がつく。


(?)アランがその紙を見てみると、『私はあなたの傭兵時代の罪を知っている。証拠が欲しくはないか? 西扇子島公園 AM2:00』とメモがあった。


 アランの顔色が変わった。

(あの女だ!煙を出したのも、あの女だな!狙いは俺か!?)

 アランはスタジアムの中に入り、ボディーガード仲間に何もなかったことを伝えてから、

「ところで、西扇子島公園というのはどこにあるか調べてくれないか?」とこの辺りが詳しいスタッフに言った。





 シルバーのベンツは国道を走っていた。


「お嬢様、いよいよ今日の深夜、決着ですね」運転席の男が話した。


「マルコ、お嬢様はやめて。もう私たちの家はないのよ。私もお嬢様ではないし、あなたも執事ではないわ」ミラが返した。


「...わかりました。ミラ、今日決着がついたら故郷へ帰ろう」たしなめられたマルコが言った。


「...あの男を地獄に落とせるのなら、私は死んでもいいわ」


「そんなことは言ってはいけません!そんなことになったら、私はあなたのお父様やお母様にあの世で会わす顔がありません!」


「いずれにしても、今日で決着よ。もう一度作戦をおさらいしましょう」


 二人を乗せた車は走り続けた。


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