パターンA
トムヤムクン大陸ラザニア王国。歴史の長いこの国は、後継ぎが生まれず、混乱に陥っていた。
しかしある時、王妃ペキンダックが子供を授かった。王国は歓喜の声に溢れ、誰もがその子に期待した。
胎児は女だった。ラザニア王国は古くから女性が王になることは無かった。故に女児を王にすると決めると、古くからの伝統を守るべきだと一部の貴族が反対したが、女を王にしてはいけないという決まりは無かったし、これを逃せば王家の血が途切れると考え、一部の貴族の反対を抑え、女児は王になることが決定した。
女児は産まれるとすくすく成長し、頭も良く、十三歳で王位に就いた。名はロールと言った。
話が変わるが、この世界では魔法が発達している。そしてやはりこの世界には、魔力がある。それに、レベルやステータス、スキルなどもある。
魔力は生まれた時から持っていて、勿論レベルが上がれば魔力も増える。そのため、レベル上げが盛んに行われるかと思いきや、難点がある。
それは、生物が死ぬとその魔力量に応じた規模の爆発が起きるのだ。
それが原因で滅びた国もある。そのため、レベル上げを好き好んでする者は少ない。それが原因で、魔物の大群に襲われて滅ぶ直前まで行った国もあった。
人々に災いを振り撒くその爆発を、人々は『天災』と呼んだ。
話は戻る。
女王はその聡い頭脳で、良い政治を行った。被害は最小限で、多くの国民を救い、国民からの支持も高くなった。人気だった一番の理由はその美貌だったが。スタイルのいいお腹、整った顔、サラサラの髪、何より大きな胸。
ラザニア王国では「おっぱいは小さいほうがいい」か、「おっぱいは大きいほうがいい」かで口論が続いていたが、女王の胸のあまりの素晴らしさに「おっぱいは大きいほうがいい」グループに全員が加入した。
しかし国王への支持率アップを快く思わない人間も居た。
国宝である聖剣を奪おうとしていたグループだ。
そのグループは国の政治をあまり良く思っていない人間を集めて、いつかは王城を襲うつもりであった。そしてもう少しで人数が揃うと思った矢先にこれだ。
国を見直した人間はグループを脱退し、残るはリーダーも含め、結成当初のメンバーだった五人。彼らは今後の計画について話し合っていた。
「リーダー、このままじゃいつまで経っても聖剣が取れませんぜ」
「分かっている。そのための会議だ」
「じゃあ何か考えようや。リーダー全然考えてなさそうやん」
「考えている」
「リーダー、何でそんなにテンション低いのですかな? ん? ん? ん? ん?」
「いやもう策はあるっちゃあるんだ。だがなぁ」
「まさか」
「うんお前が何を思いついたのかは知らないが多分そのまさかだ」
リーダー呼ばれている男は、ラザニア王国にある森林、ブロッコリー大森林にある洞窟で試練を受け、試練を突破すると貰える影の爪を取れば可能性があると考えていた。しかしその試練を突破した者は居ない。
ちなみに「まさか」と言った男が考えていたまさかは、穴を掘って王城の地下に行くことであった。
リーダーはしばらく考えた後、試練を受けることを決断し、レベル上げの日々に励んだ。
十年後、女王は二十歳を超え、スタイルのよさも更に磨きが掛かった。だが、二十歳になるとき、教会で成人の儀をした。その時に判明したこと。
――女王ロールは、生まれつき死んだ時に国の領土全てを破壊するほどの魔力を持つ。
しかしあまり混乱は起きなかった。なぜなら、天災を研究した学者が、天災の被害を防ぐ箱を開発した。その中で人が死んでも外に爆発が漏れることはない。
そして政治の腕は確かだったので、ラザニア王国はそんなことは気にせず発展していった。
「女王!女王!」
そんなある日家来の一人が女王の所に走ってきた。
「何があったのだ?」
「はい、息切れした様子を見せてしまい、申し訳ございません。国宝を狙う盗賊がやってきました!」
「敵は何人だ?」
「五人です」
「そうか。少ないが少数精鋭で来たのも考えられるな。まずは様子見で十人出せ。苦しいようなら全員出しても構わない」
そう言うと家来は「は、はいっ!」と言って走って行った。
城のあちこちで音が聞こえる。
――それにしても長い。
女王は心配になったので、様子を見に行くことにした。執務室の扉を開ける。
「女王様!」
扉を開けると同時に、家来の声が聞こえた。そして目の前には家来を担いだ大きな男。
このような男は知らないので盗賊だと判断した。
「ふっ。騎士団がどのくらいの強さかと思えばあの程度か。次はあんただ女王さん」
ちなみに男――リーダーは女王の魔力量が多いことを知らない。大体小さい部屋一つ分くらいだろうと考えている。
リーダーは右手を上に挙げる。
「ちなみにこれは影の爪だ。まあ影の爪には何の効果も無かった。だが俺は影の爪を手に入れるためにひたすらレベルを上げた。レベル380だぜ」
丁度その場にやってきた騎士達は、レベル380という言葉を聞き、「なっ」と声を漏らす。レベル380は物語にも出ないほどの高レベル。物語ではレベル150の勇者が圧倒的強さで魔王を倒す話が有名だ。
「ほう。だからといって素直に聖剣を渡すわけには行かん」
女王がそういうと、リーダーは目にも見えない速さで女王の後ろに回り込み、首筋に爪を立てる。
「別に最初から教えてくれるなんて思っちゃいねえよ。だがこうすれば部下が勝手に教えてくれるだろ?」
「ふん。お前達!私が死のうと絶対に口を割るでないぞ!」
そう言った女王は声を落ち着け、次はリーダーに問う。
「ところで他の四人はどうした」
「ああ、あいつらなら錯乱に行ってもらってるよ。魔術師団を抑えるのが主な目的だな」
「お、お前!女王を離せ!」
声をするほうを見れば、魔術師団団長、ソーセージーが居た。
魔術師団は一斉に呪文を唱えはじめる。
しかしリーダーはレベル380もあればどんな魔法でも平気だろうと余裕の表情だ。
魔術師団の魔法がリーダーを襲う。その時余裕の表情だったリーダーの顔が苦痛に歪んでいく。
魔術師団が打ったのは攻撃魔法ではない。麻痺魔法だった。麻痺耐性も中々のものだったんだろうが、この人数からの麻痺魔法には耐えられなかった。
遠退いていく意識の中、リーダーは女王の心臓を狙って爪で攻撃する。
騎士達、魔術師達から悲鳴があがる。
遂にリーダーの爪が胸の皮膚に到達した。
しかし、胸のあまりの弾力に爪は跳ね返されてしまい、女王は傷一つなくそこに立っていた。
リーダーはその場に倒れた。
リーダーは天災対策の箱に入れられ、騎士数人に三日三晩の間攻撃され、命を引き取ったという。