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<55> 思案

ナナエを伴って王都に帰還してから1週間が経つ。

あれからナナエは多少の感情の起伏はあったが、供や警護を連れての近場の散策を許可した為か、以前よりは落ち着いてきたように思えた。

相変わらず魔力を抜くのは嫌がるが、ひとまず安心といったところだろうか。

そして、ヤボラ滞在期間中に調べさせた、ナナエと共にライドンで暮らしていた者達の調査結果に再び目を落とす。


まずはオスカルと呼ばれていた男。

──リフィン・ルフド・サルヴァス

 サルヴァス侯爵家 次男 

 オラグーン第一王子セレン・シャルド・オラグーンの学友にして王城使えの医師。


そしてアンドレと呼ばれていた男。

──カイト・ヴァン・ヴァルーナ・ナーティス

 ナーティス伯爵家 三男

 オラグーン第一王子セレン・シャルド・オラグーンの学友にして王子付き騎士。


王子の極々側近とも呼べるこの2人が王子の側ではなく、ナナエの側にいる。

ということは、やはりナナエは王子の側室では無くとも、その候補ではないのだろうかと考えられる。

王子自身が行方不明となっているのだから、今のオラグーンの内情を鑑みると考えられることは2つ。

王子の命でナナエの側に控えていたのか、それとも王子が近くで潜伏しているのか。

ナナエが居住していた邸宅を探っては見たが、既に管理人以外は住んでいないようだった。

王子と共に潜伏先を変更したのか、もしくはナナエを見捨てたのか。


どちらにしても、ナナエを取り戻しに来る可能性のほうが高いと思われた。


だからこそ、その報告を受けてすぐに王都へと帰還したのだ。

オラグーン国境間近の町に滞在するのは得策ではないと考えたからだ。


そして、あの男。

──トゥーゼリア・ファルカ

 ファルカ子爵家 嫡男。

全く隙の無い、ナナエの執事としていつも控えていた男。

調べてみても確かなことは分からなかった。

滅多に外出をしない社会不適合者だったとの報告は上がっていたが、あの体格や身のこなしは、決して貴族のソレではない。

あの男の妹だと言う侍女、マリー・ファルカにしても良家の子女にしては無駄な動きが少なすぎる。

ナナエの廻りにはいやに有能な者たちが多いとは思っていた。

それが、元々王子の側近たちであると言うならば納得できなくもない。

しかし、何故ナナエなのか。

ナナエの素性がはっきりとしない。

戸籍登録証にはキリヤと言う家名が刻まれている。

家名がある以上、貴族であることは間違いないのだが…キリヤという家が存在しない。

少なくともオラグーンには無い家名である。


と、なると。

多国の貴族である可能性が高い。

世継ぎの王子が他国からわざわざ貴族の姫を側室として迎えるだろうか?

それならば、他国の姫君の可能性を捨て切れない。

──側室ではなく、正室候補だとしたら?

それならば王子の側近をそのまま護衛としてつけるのも納得がいく。


では、どこの国の姫なのか。


そこでまた壁に当たる。

ナナエの素性が杳として知れないのだ。

オラグーンの離宮で賓客として扱われていた事までは追えた。

それ以前が全くわからない。

まるで突然振って沸いたのごとく、だ。


ルーデンスはありえないといった感じで首を横に振った。

おそらく何らかの理由があるのだろう。

ナナエから直接聞くのが早いのだろうが、本当のことを言ってもらえるとも、話してくれるともわからない。

この件に関しては、しばらくは保留にしなければならない。




そして。

ガルニアからの書状。

こちら、エーゼル側から姫の不着についての書状を出している。

ガルニアの姫の足跡には全てガルニア側と思わせる工作を施し済みだ。

さて、どういった返答が来るや否や。


ざっと書状を流し見る。

概ね言葉は濁してあるが、内部の犯行と見ているとの返答と…やはり、エーゼル側で不明になった点についての責を問う内容だ。

やはり、素直にはいそうですかとは納得はできないのだろう。

(遺体はやはり必要か…)

あのあと谷底を浚わせる命を出したが、未だに遺体は見つかっていない。

数名の騎士の遺体と馬車の残骸、侍女と思しき女の遺体を発見したのみだ。

ガルニアの姫の遺体はもしかしたら投げ出されて下流に流されたのかもしれない。

こちらは追加で兵を投入して衣類の一部でも発見できればいい。




最後に。

このオラグーンよりの書状。

これをどう見るか。

差出人はオラグーンの王弟であるパーリム大公である。

内容はオラグーン王の名代としてエーゼルの魔道研究所の視察と他国に誇る盛大な収穫祭の観光の許可を求めるものだ。

この時期にオラグーンの縁者である。

何かあると疑ってもおかしくはない。

いや、何かあるのだろう。

しかし視察目的を掲げて来る以上、表面上友好関係を築いている国の王弟を蔑ろになど出来はしない。

受け入れるしかない。それも喜んで、だ。

苦虫を噛み潰したような表情でその書状を執務机の上に放り投げる。


「来るのはボンクラか、それとも狸か…」


そう呟き、深く息を吐く。

ただでさえ収穫祭の時期は死ぬほど忙しい。

それにガルニアへの対処にも手を割かねばならない。

ルーデンスはオラグーンの王弟がボンクラの方であることを願わずには居られなかった。

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