【04-07】
「真理奈さんが由梨亜さんに話していたんです。チャペルの先生に、いつも相談に乗ってもらっているって」
「あ、そう言えば、何度か相談に来ていたわ。やりたいことがあるって言ってかな。具体的な話はしなかったけれど」
「そんなバカな」
明星の発言に、颯一は驚きを露にした。
「真理奈さんの話を聞いて、署名運動というアイデアを出したのは、明星先生ですよね」
「ちょっと待って。そんなの初耳よ。由梨亜さんの勘違いじゃないかしら」
「じゃあ、署名というのはどうかしら? 生駒さんがみんなに訴え、賛同してくれる人に名前を書いてもらうの。そうすれば……」
それは明らかに明星の声だった。
何が起こったのか解らず、ただ呆然とする明星。
そんな彼女の前に、颯一は小型のボイスレコーダを置いた。
「真理奈さんが録音していた物です。彼女は先生をとても慕っていました。だから、先生の話を何度も聞き返すために、こっそり録音していたんです」
間があった。
明星は普段と変わらない柔和な笑み。
まるで造り物のように、顔に張り付いている。
ゆっくりと口を開くと、穏やかな調子でこう告げた。
「『死の九番』ってハートの九を持っていた人が殺されるのよね。実際に、殺された生徒さん達はハートの九を持っていたと聞いてるんだけど」
「先生の仰る通りです。決められた日にハートの九を持っていた生徒が殺されます。証拠のひとつとして、トランプも警察に押収されています」
「誰がハートの九を持っているか解らないんじゃないかしら。偶然、問題行動を起していた人の手に渡っただけで」
「真理奈さんについてもトラブルと言えます。つまり八人全員が学校とのトラブルを抱えていた。偶然と呼ぶのは乱暴だと思いませんか?」
「運命だったのかも知れないわね。残酷な話かもしれないけど」
目を伏せて、半ば呟くように答える。
「全ては神の思し召し。宗教的な、実に都合の良い解釈ですね」
あえて挑発的な言い回しを選んだ。
案の定、明星が反射的に顔を上げた。
「そういう言い方はよくないわ。神は私達を常に見守り……」
「ただのトリックです。いや、トリックとも言えない、単純な手口ですよ」
端的に断じると、ポケットからトランプを一枚出して、裏向きのまま明星に差し出す。
あまりに自然な動きに明星がなんとなくカードを受け取る。
引っ繰り返すとハートの九だった。
「これが『死の九番』の使った方法です」




