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【04-06】

「戒め、です」

 

 颯一の回答はシンプルだった。

 

「ここはとてもいい学校です。理想的な学校と言ってもいい。生徒の誰もがモラルから逸脱することなく、素直で健全な学生生活を送っている。時折、ハメを外す者もいますが、他校のように大きな問題になるほどではありません」

「それは職員の努力と、何より生徒の資質による物じゃないかしら」

「残念ながら違います。思春期の生徒達は、窮屈な生活では満足できない。余程の重石がない限りは、暴走してしまう子が必ずいます」

「その重石が『死の九番』だと言うの?」

「はい。犠牲者となった生徒は、残酷な死に方をします。それが自分の身に降りかかるかもしれない。そう思うと、過ぎた行動は控える。つまり戒めになるわけです」

「なかなか個性的な解釈ね」

「『死の九番』によって殺害された生徒について、新聞部に情報を提供してもらいました」

 

 鞄の中から数枚の紙束を取り出してめくる。

 

「最初のふたりは記録が残ってないのですが、それ以降の人については学校側とのトラブルがあったようです。校則違反の常習者だったり、不純異性交遊が取りざたされたり、暴力行為をはたらいたり」

「学院の問題児だったのね。でも、三年前に犠牲になった子は素直で良い子だったと記憶しているわ」

「生駒 真理奈さんは明朗快活な生徒だったようです。勉学はやや苦手だったようですが、生徒会にも参加する基本的には模範生と言えます」

「では彼女の殺された理由が、戒めというのはおかしいわね」

 

 諭すように告げる明星に対し、颯一は首を振って否定を表した。

 

「真理奈さんの妹、由梨亜さんから話を聞きました。真理奈さんがこの学院で、何をしようとしていたのか。あ、でもそれは先生の方がよくご存知なんじゃないんですか?」

「どういう意味かしら?」

「真理奈さんが殺害されたのは三年前。先生はこの学校にいらしてたはずですよね?」

「そうね。うん、覚えてるわ。彼女は何か署名運動をしていたみたいなの」

「由梨亜さんよると、校則を変えるために署名を集めたらしいですね。制服を今風の物に変更したいとか、アルバイトの解禁だとか。あとは恋愛の自由もあったらしいです。ご存知なかったですか?」

「ごめんなさい。内容についてまでは、把握してなかったの」

「どうしてなんだろう。解らないな」

 

 颯一が小さく首を傾げた。

 

「教師だって知らないこと、解らないことは沢山あるものよ」

「いや、そうじゃないんですよ。何故、先生が嘘をつくのかが解らなくて」

 

 明星の微笑みが微かに揺れる。

 

 


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