【04-04】
「ごめん。非常識なのは解ってる。うん、『死の九番』の件なんだけど。殺された生徒達についての情報って集まるかな? あ、新聞部に記録があるんだ。それは助かるよ」
いくつか頼むと、明日メールで送ってくれるように付け加えた。
そして最後に、もう一箇所。
「もしもし、こんな時間に悪いと思ってる。ありがとう。そう言ってくれると救われるよ。うん。僕達、明日休むつもりなんだけど、瑞穂さんも早めに帰宅して欲しいんだ。安心しきってるように見せかけるために。それと校外で理事長に近付けるかな? ひとつ頼みたいことがあるんだ」
※ ※ ※
──九月二十日(金)──
午前六時。
夏らしさもすっかり抜けて、秋の空気をより感じる時間帯。
始業の二時間以上前。
生徒はもちろん、教師もまだ登校していない。
いつもこの時間には明かりの点いている理事長室も暗いまま。不在なのが解る。
「あの、先生」
遠慮がちに掛けられた声に振り返った。「あら」と小さな驚きを見せつつも。
「常磐さん。あ、颯香さんと呼んだ方がいいかしら?」
音羽 明星は包み込むような暖かい笑みを浮かべた。
いつも通り、黒を基調にした修道服に身を包み、竹箒を手にしている。
「呼びやすい方で呼んでください。あまり拘りがないので」
「もういいの? 昨日、体調不良で休んだのよね?」
「はい。もう大丈夫です。でも僕のことなんて、一体どこで?」
「ん。正確には妹さん、リンちゃんの方ね。合唱部の子達が話していたから」
「昨日は木曜ですよね。部活はなかったはずじゃ」
颯一が大袈裟に首を捻る。
「ふふ。部活がないと生徒さんとお話しちゃダメなのかしら」
「あ、いえ。ごめんなさい。心配してもらったのに。変なこと言って」
「どうしたの? こんな早くに」
颯一が鞄を手に提げているのを見て、教室にも寄らず来た事を悟って尋ねる。
「音羽先生が、いつも早くからチャペルの掃除をしてると聞いたので」
「神聖な場所だから、やっぱり綺麗にしておきたいし。でも冬は寝坊しちゃったりするの。あ、みんなには内緒にしておいてね」
軽いウインクを添える。
「で、わざわざ先生に会いに来てくれたの?」
「先生が色々と相談に乗ってくれるって聞いて」




