【04-03】
「兄上、『死の九番』は事件が起こってから、噂になっておりますぞ」
「む。そうじゃったな。颯一、今の話ではつじつまが合わんぞ」
指摘に颯一が口をつぐんだ。
しばしの時間、思考を巡らせる。
「その通りだね。どうやら犯人探しに夢中になり過ぎて、情報を組み立てていくのを疎かにしたよ。都合のいいように決め付けてた。僕もまだまだだね」
「ふん。当たり前じゃ。まだ百年も生きておらんくせに」
「いやいや。姐さん、普通の人間は百まで生きませんって」
「そのくらいのことも解らぬとは。もう少し常識を学んでくだされ」
「うるさい! 揚げ足を取るでないわ!」
平手で二匹を肩から叩き落とす。
「しかし、ますます三年という理由が解らなくなってきたの」
「どの生徒にも『死の九番』を意識させるのは近いと思うんだけど」
「ふむ。それはあるな。現に校内新聞で記事が出るだけで、異様なほどの盛り上がりを見せておる。口にしないが、普段から不安があるのじゃろう」
「進学校というのもあるけど、悪く言えば活気に欠けるよね。何をしてても、少し行儀のいい感じがするっていうか」
「粋がってると、『死の九番』様からカードが届くんすかね。ご大層な怪異様かと思えば、安っぽいプライドを守る番長みたいなもんだったなんて」
茶化す瑞に、颯一が苦笑する。
「それじゃあ、『死の九番』はまるで……。ん、待てよ」
と、そこでふと引っ掛かった。
ノートパソコンに手を伸ばし、データを検索する。
「やっぱり、そうか。じゃあ、次に確認すべきは……」
「何か思いついたか。ま、あまり遅くなるでないぞ」
「じゃあ、あっしらはこれで」
「何か手伝えることがあったら声を掛けてくだされ」
「うん。ありがとう」
簡素なおやすみの挨拶を交換して、リン達が部屋を出る。
「こんな時間だけど、非常時だからしょうがないよね」
自身に言い聞かせながら、携帯で電話を掛ける。
「あ、ごめん。こんな時間に。どうしても今日中に聞きたいことがあって。お姉さんのことなんだけど。在学中にトラブルみたいなのはなかった? ないか。真面目な人だったみたいだしね。あ、そんな活動してたんだ。え? そんなのが残ってるの? 借りられるかな? ありがとう」
手短に通話を終えると、次のコール先を選ぶ。




