【01-09】
よく解らない理屈だったが、小鬼達はこれ以上の言及を避けた。
下手につついて、怒らせたくないからだ。
「予想通り、純さんからだったよ」
ダンボールをふたつ抱えて、颯一が戻ってきた。
「相変わらず意外性に欠ける男じゃのぅ」
「宅急便に意外性を求めるのはあんまりじゃないかな」
話しながらも手際良く片方を開封。
中からシンプルな半袖シャツと、ブルーチェックのスカートを取り出した。
「これがリンの分かな。サイズを確認してみてよ」
「ふん。面倒だが仕方ない。試着してやろう」
服を抱えると、ぱたぱたと駆け足で自室に駆け込む。
「あれま。随分と嬉しそうでやんすね」
「姐上も一応は女性。新しい服に喜んでおるのであろう」
「もうちょっと生活に余裕ができれば、服くらい買ってあげられるんだけど」
警察からの報酬は多くないし、頻度も不規則。
家を出る時に渡されたお金を切り崩して、家賃は工面できている。
しかし、心許ない生活なのは確かだ。
「兄上、心配無用ですぞ。功名を重ねていけば、きっと路は拓けるはず」
「その前に殺されちまうかもしんねえでやんすけど」
「縁起でもないことを言うでない。兄上に万一があれば、我らも路頭に迷うのだぞ」
「そうでやんすね。ここほど待遇のいい働き口は、期待できないでやんすし。兄さん、しっかり長生きしてくだせぇ」
深々と頭を下げる瑞。
「そこまで心配してくれるなんて、鬼遣い冥利に尽きるよ」
「冗談めかして言ってやすが、二割くらいは本心でやんすからね」
相変わらず質の悪い冗談を聞き流しつつ、もうひとつのダンボールを開ける。
「あれ?」
そこに入っていたのは、先ほどと同じ。シャツとスカートのセット。
「もう、純さんってホントにミスが多いね」
「ある意味では意外性に欠けると言えますな」
翔が大仰に溜息をこぼすのと同時に、リンの部屋のドアが勢い良く開いた。
「あのうつけ者が!」
思わず視線を向けたひとりと二匹が、ぷっと笑いを漏らす。
「こら! 笑うでない! 無礼であろ!」
真っ赤になって声を荒げるリンの格好は、滑稽極まりない状態だった。
シャツは肩幅がまったく足りず、半袖のはずが七分袖に。
膝上丈のスカートも脛近くまで届き、ずり落ちそうなのを左手で掴んで止めている。