【01-08】
「どうにも解らないことだらけだけど。調べられたのは、このくらいだよ」
「警察は現実的な組織じゃからな。それだけ解っただけでも驚きじゃ。それに」
ぐいっと湯飲みのお茶を飲み干して、不敵な表情を浮かべた。
「せっかく現地に行くのじゃ。謎の多い方が面白いであろ」
「と言いつつも、謎解きは兄さんの担当でやんすからね。姐さんは頭を使うのが苦手でやんすし」
「そういう言い方をするな、瑞。誰しも得手不得手というのがあるのだ」
「おい。お前ら」
こめかみをヒクヒクさせながら、リンが割り込む。
「随分と面白いことを言うではないか。それなりの覚悟があると思っていいのじゃな?」
ぎろりと睨まれ、瑞と翔は揃って萎縮してしまう。
「リン、図星だからって脅すのは良くないよ」
「図星なものか。余は知恵と力を兼ね備え、しかも超絶な美貌すらも持ち合わせおるのじゃぞ。まさに完璧な存在じゃ」
子供らしいぺったんこの胸を、これでもかと張って主張する。
「よく言うよ。先週末だって、解けない知恵の輪を力づくで引き千切っちゃったのに」
「あ、あれは違うぞ。その、そう、機転じゃ。結果的に外れたのだ。問題ないであろ」
「あれって、あっしらでも解けたんでやんすよ」
「姐上、行き詰ると力づくで解決を図るのは関心できませぬぞ」
「むぅぅぅぅ」
ぶうっと頬を膨らませ、低い唸り声を漏らす。
と、そこでインターフォンが鳴った。
「む、何か食い物でも届いたか?」
途端に不機嫌を霧散させたリンに、颯一は苦笑せざるを得ない。
「きっと、純さんからだよ。あっちの学校の制服じゃないかな。僕とリンの分を頼んでおいたんだ」
「ほほぅ。余も学校とやらに行けるのだな」
「そんな楽しい物じゃないから、期待しないでね」
そう残して玄関に向かう。
「学校には授業ってのがありやしてね。とにかく退屈なんでやんすよ」
「そんなことはない。興味深い話を聞かせてくれる。我ら鬼族にも学問は役に立つ」
「ふん。お前らは颯一にくっついて学校に行っておるからいいが、余はいつも留守番。退屈でたまらんのじゃ」
「そうでやんすか? いつも気楽に寝てばかりだと思ってやしたが」
「ふん。万が一に備えて、体力を蓄えておるだけじゃ」
「その割には日がな一日、テレビゲームなる遊戯に夢中になっておられるようですが?」
「ふん。最先端の文化に触れて、人の世界を肌で学んでおるのじゃ」