【03-14】
絵文字も顔文字もないクールな彼女らしい文面で、「手応えは上々よ。見事なもんでしょ?」と、これまた彼女らしい自信に満ちたコメントだ。
表情を緩めながら、素直に賞賛メールを返信した。
「何かあったんですか?」
「理紗さんからだよ。上手く書けてるでしょって」
尋ねる舞に新聞の一面を指しながら答える。
すうっと舞の目が細められた。
どことなく殺気めいた表情になる。
いきなりの変化に颯一は疑問符を浮かべるしかない。
「なに? 瑞穂さん、どうかしたの?」
「いえ、別に。なんでも。そうですか。足柄さんからですか」
「うん。理紗さんから。今日の新聞についてなんだけど……」
「足柄さんから、ですね?」
意図の見えない確認に、当惑しつつも颯一が頷く。
「もう一度聞きます。誰からのメールですか?」
「だから、理紗さん……」
鋭さを増した視線に続きを飲み込んだ。
どう反応すべきか解らず、ちらりとリンに助けを求める。
「舞よ。どうしたのだ。颯一が当惑しておるではないか」
やれやれという顔でリンが割って入った。
「言いたいことがあったら、ハッキリ言えばいいであろ」
「私のことは苗字で呼ぶのに、どうしてあの子は下の名前で呼ぶのよ!」
などと言えるわけがない。
ぎりりと奥歯を噛み締めながら、くるりと背中を向けた。
乱暴にどすんと座る。
残される形になった颯一とリン。
「僕、何か失礼なこと言っちゃったのかな」
「気にするな。おんなごには機嫌の悪い日もあるのじゃ」
互いに顔を近づけ、こそこそ意見を交換する。
卓越した『鬼斬り』である舞に、その声が聞こえぬはずがない。
一層苛々が募る。
「おっはよ」
底抜けに明るい声が飛び込んできた。
陽菜だった。
「どうしたの、舞。怖い顔してるけど」
「別に、なんでもありません」
素っ気無く答えると、ぷいっと窓の外に顔を逸らした。
「あんま不機嫌な顔してると、ホントにぶっちゃいくになるよ」
親友らしい距離感で嗜めながら、颯一達に目を移す。
そこで、机の上に置かれた校内新聞に気付いた。
「相変わらず、下らない記事書いてるよね」
苦笑しながら、ひょいと摘み上げる。
そのまま極自然な動作で、まっぷたつに破った。
颯一があっと声を上げる暇に、もう半分。
 




