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【03-13】

「まだ、学校の近くなんだ。戻って見れるかな? うん。じゃあ、直ぐ行くから」

「むう。パフェはお預けか。よし、この恨みも『死の九番』に上乗せじゃ」

「食べ物の恨みは恐ろしいからね。少し同情したくなるよ」

 

 言いながら足を反転、学校に向かって進み出した。

 

 

                    ※ ※ ※

 

 

──九月十八日(水)──

 

 十数弱のコピー用紙をふたつ折りしてホッチキスでまとめた小冊子。

 これが三十余年の歴史を誇る古参文化部、『聖アンドリューズ学院新聞部』が発行する校内新聞である。

 

 設立当初は校内掲示板に張り出す壁新聞だった。

 それがガリ版刷りの配布物に変わり、藁半紙のコピー物に進み。ここまでの発展を遂げた。

 

 発行は毎週水曜日。

 登校時に南の通用門で配布する形式だ。

 

 今週号の一面は極太の見出しで「動き出した死の九番! 三十年続く怪事件の謎に大きく迫る!」と扇情的に書かれている。

 

 教室。

 自分の席についた颯一は、校門で受け取った小冊子をパラパラとめくった。

 

 まず過去に起こった死の九番事件のあらましが時系列で掲載。

 次に三年毎に起こるという部分がクローズアップされ、順当に行けば、今年がその年に当たると警告めいた内容が続く。

 更にスクープとして、死の九番からのカードが生徒に届いているとという噂について言及。

 過去の事件のカードとの類似点を挙げ、信憑性を謳いつつも、偽物であるという可能性も高いと釘を刺しており、今後の継続した調査を続ける旨で締められている。

 冷静に読むとどっち着かずの微妙な内容だが、インパクトのある単語を巧みに配し、実に好奇心を煽る仕上がりだ。

 

「期待してもらっていい」と言い切れる理紗の才覚は伊達ではない。

 昨日、学校に戻って原稿を目にした颯一は、予想を遥かに上回る出来上がりに舌を巻いたくらいだ。

 

「なかなかに大した物じゃな」

 

 隣のリンが周囲を見やりながら告げる。

 

 始業までのこの時間は、数人単位のグループに分かれたクラスメイト達が雑談に花を咲かせている。

 漏れ聞こえる単語は、『死の九番』絡みの物が多い。

 

「おはようございます。今日は噂で持ちきりですね」

 

 前の席に荷物を置きながら舞が笑顔を見せた。

 いつも通り穏やかな口調で、クラス委員らしいキャラを演じている。

 顔半分の湿布は健在だが、輪郭は戻りつつある。

 

 不意に颯一の携帯がメールの着信を告げた。

 理紗からだった。

 

 

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