【03-12】
「ふん。面白い。むしろ楽しみになってくるくらいじゃ」
リンが不敵な表情に変わる。
「じゃが、舞に隠しておく必要もあるまい」
「リン、もし僕らが次の敵を倒しても、状況は今と何も変わらない。『死の九番』の有利な点は、同じことを繰り返せばいいところにあるんだ。僕らはこのループを断ち切って、『死の九番』に近付かないといけない」
颯一の説明に、リンは「難しいな」と呻いて黙り込む。
「リン、どうして『死の九番』は三年毎に事件を起すと思う?」
「ん? どういう意味じゃ?」
「怪異が人を殺める理由はいくつかあるよね」
「そうじゃな。捕食というのが多いが、他にも娯楽的な意味合いで人を襲うモノもおるし。なんらかの因縁や怨恨で人を狙うモノもおるな」
「僕は『死の九番』が、それらに当たらない気がするんだ。三年毎という間隔の広さもあるけど。パスできるという理由が当てはまらない」
「人を殺めるというのが目的ではなく、手段ということか。となると……」
「まずは『死の九番』の目的を暴かないといけない」
「ふむ。そこまでは聞けば解ったぞ。直情的で短絡な舞は情報収集に向かぬ。むしろ、こちらの真意が漏れる可能性があると踏んだのじゃな」
「そんなこと言ってないって。瑞穂さんには、戦いに集中して欲しかっただけだよ。色々と考えさせて集中力を乱したくないだけだから」
「ふん。そうしておくか。まあ、戦うのは余や舞の担当。考えるのはお前の担当じゃ」
「効率重視の分業だね」
「なんにせよ。明日からが勝負というわけじゃな」
「そうなるね。じゃあ、景気付けに甘い物でも食べて帰ろうか」
「をを!」
リンが背丈にマッチした無邪気な笑みを浮かべる。
「悪くない提案じゃな! この辺りのパフェとやらも食べてみねばなるまいと思っていたところじゃ!」
「以前、雑誌で読んだんだけど、この駅の近くに美味しいお店が」
唐突に携帯が鳴った。
ディスプレイに浮かんでいる名前は、足柄 理紗。
通話ボタンを押して耳に当てる。
「私よ。今、原稿が上がったわ。自宅のメールとか教えてくれたら送るけど?」
礼を述べながらリンをちらりと見やる。
リンが頷いた。
長い付き合い。言葉を交わさなくとも、このくらいの意思疎通は可能。




