【03-11】
「ただ『死の九番』がいきなり動く可能性もある。油断はしないようにしよう」
「大丈夫よ。いつでも対応できるようにしておくから」
「ありがとう。頼りしてるから」
「ま、任せて。うん、大丈夫。大丈夫だから」
面と向かって言われると照れる。
頬が上気するのを感じて顔を伏せてしまう。
「意気込むのは結構じゃが、張り切りすぎて失敗せんようにな」
「解ってるわよ。見てなさい。この前の汚名を返上してみせるから」
大雑把に役割分担を決めた後、リンが残っているポテトを平らげて終了となった。
外に出るとすっかり夜。
頭上にはちらほらと星が散らばり、せっかちな月が弱々しい輝き放っていた。
「もう秋ね。日が落ちるのが早くなった」
舞がなんとなく呟く。
「余らの住んでいたところは、ここより遥かに暑かったぞ。ま、この件が片付いて戻れば、幾分か涼しくなっているはずじゃ」
「空調代が助かるね」
「相変わらず家計は厳しいからのお」
高校生とは思えない所帯じみた会話を聞きながら、舞はふと考えた。
ふたりが学校にいるのは、期間限定の一ヶ月のみ。来月の今頃は……。
なんとなく心が重くなる。
「瑞穂さん、家まで送るよ」
「あ、ううん。大丈夫」
これ以上、顔を合わせていると感情が空回りしてしまう。
「じゃあ、また明日」
早口でそれだけ告げると、踵を返して駆け出した。
流石は『鬼斬り』の身体能力、軽妙な動きであっという間に離れて行く。
舞の姿が視界から消えた頃合でリンが唐突に尋ねる。
「何故ウソをついた」
「なんの話かなってとぼけてはみるけど?」
「ふん。十年の付き合いじゃぞ。余にも話さぬ方がいいのか? ならこれ以上は聞かん」
「ううん。リンには話すつもりだったから」
「次の打ち手についてじゃな?」
「うん。『死の九番』は行動してから状況を見るタイプだと思う。だから記事が載れば必ず仕掛けてくる。足柄さんや生駒さんを直接狙ってくる可能性が高い」
「それはほのめかしておったな。油断するなと」
「でも、『死の九番』が直接出てきたりはしないはずだよ。前の黒マントみたいな刺客を送ってくる。で、最終的に僕らに倒されるだろう」
「なるほど。もう一度、余らに『死の九番』を倒したと思わせるわけじゃな」
「今度はこの前の黒マントより手強い相手になる。これが本物だと思わせるくらいの。そんな敵を相手に、僕らはふたりを守りきらないといけない。厳しい戦いになる」




