表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/141

【03-10】

「少し気になってたんだけど。なんか話し方が回りくどくない?」

 

 的の中心を見事に射抜いたひと言に、思わずリンが笑みをこぼした。

 

「その通りじゃ。こやつは持って回った言い方をしおる。特に策を巡らせておる時にはな。人より機転が聞くところを、遠まわしに自慢したいのじゃ」

「そんなことないってば、これ以上変なキャラを付加しないでよ」

「そうよね。女装趣味ってだけでも、かなりアレな感じだものね」

 

 悪ノリする舞に、颯一は「だから、趣味じゃないってば」と苦笑をひとつ。

 

「まあ、余談はともかく続きじゃ。さっさと説明せい」

「はいはい。じゃあ、話を戻すね。僕達が足柄さんから接触したことで、『死の九番』はふたつの可能性を考える。僕達が新聞部からカードの情報を得たのか。カードのことを知って新聞部に協力を依頼したのか」

「普通なら前者の方が、説得力があると思うわね」

「そうなると『死の九番』が健在だということになって、当初の目論みは崩れる」

「だからって動く? 様子を見るんじゃない?」

「そうなると睨み合いなるだけじゃ。颯一よ、その先の手があるのか?」

 

 問うリン。

 舞も期待を込めた眼差しで颯一の言葉を待つ。

 

 やや間を置いて、颯一は細い肩を軽く竦めた。

 

「実のところ、何も考えてないんだ」

 

 予想と余りに掛け離れた返答に、舞がぽかんと口を開けた。

 

 リンはこういう遣り取りに慣れているのか。

 顔色を変えず、ポテトを口に運んでいる。

 

 なんとも言えない微妙な空気の中。

 リンの咀嚼する音だけが数秒間続いた。

 

 ふうっと颯一が嘆息。重い沈黙を破る。

 

「ごめん。とりあえずは敵の出方を待とうって言ったつもりだったんだけど」

「ふん。余にはそう聞こえんかったがな」

「大丈夫よ。私はそう理解できたから。そうよね。ここは待つべきだわ。ほら、鷙鳥の撃ちて毀折に至るは、節なり。って言うでしょ」

「ん? しちょうがなんじゃと?」

「鷙鳥の撃ちて毀折に至るは、節なり。孫子よ。猛鳥が獲物を一撃で倒すのは、タイミング良く力を集中させるから。何事もタイミングが大事ってこと」

「最初からそう言えば良いであろ。訳の解らん言葉を使う必要なぞあるまいに」

「いいでしょ。好きなんだから」

「まあまあ。ふたり共」

 

 じゃれ合い始めたリン達に颯一が割って入った。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ