【01-07】
「リン、瑞と翔は優秀だよ。何度も助けてもらっているんだから」
「いやいや。兄さんは解ってるでやんすね」
「その言葉、何よりの励みになりまする」
颯一の言葉に二匹の鬼達は、実に嬉しそうな反応を見せる。
「まあ、いいであろ。それよりも事件についてじゃな」
リンが話を戻した。
「そうだったね。『死の九番』はこの学校に伝わる怪談らしいんだけど……」
『死の九番』。最初の事件は三十年前になる。
授業中、ひとりの少女が絶命した。死因は窒息。
死ぬまでの数分間、もがき苦しんだらしく、死体は凄惨な状態だったそうだ。
当時は病気の発作として決着。警察の捜査は殆ど行われなかった。
「ふん。随分とずさんな話じゃな」
「大事にしたくないという学校側の意向に乗った形みたいだね」
その後、何事もなく三年が経過したある日。ふたり目の犠牲者が出る。
ひとり目と同じ、授業中に突然の窒息死だった。
更に三年後、またも類似した事件が起こる。
三人目の死者が出て、ようやくにして警察も捜査に踏み込んだ。
そして彼女がつけていた日記から、『死の九番』の存在が明らかになった。
『死の九番』は一通の封筒が届くところから始まる。
下駄箱の中や、学校の机の中に入っているらしい。
中にはトランプカードが一枚。スートはハートで、彼女の場合は三だった。
そしてカードの右下には日付が書き込まれていた。
「その日付に九のカードを持っていた人が死ぬんだって。実際、三人目の犠牲者の鞄からハートの九が見つかったらしい」
「ババ抜きじゃな。最後にジョーカー、ハートの九を持っていた者が負けになる。代償が命というのがシャレにならんが」
リンが首を傾げる。
「しかし、いきなりカードを押し付けられて、そんなゲームに参加する気になるもんかのう?」
「何か特典でもあるんでやんすか?」
「明確には解らないんだけど、最後まで他のカードを持っていた人間には、大いなる祝福ってのが与えられるんだって」
「具体性に欠ける話じゃな」
リンが呆れた声を出した。瑞と翔も頷いて同意を表す。
「実のところ、他のカードを持っていた生徒は見つかってないんだ。これは三件目だけじゃなく、それ以降の事件でもなんだけど」
「死者が出ておるのだからな。言い難いというのもあるか」
「姐上、口止めされておる可能性もありますぞ。カードの件を他人に話すと、死んでしまうというのかも」
「実際、九を持ってた奴が死んじまうんすから。効果的な脅しになるでやんすね」