【03-09】
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「校内で相談できないのは不便よね」
舞が対面に座るふたり、颯一とリンにこぼした。
テーブルの上には紙コップ入りの飲み物と、お得サイズのポテト。
三人は学校を出ると、駅近くのファーストフード店に移動。
一番奥の席に陣取った。
狭い店内は半分くらいが、颯一達と同じ制服の少女達。
部活帰りなのあろう。楽しそうに話している。
「仕方ないよ。僕達みたいな存在は、あまり公にできないから」
「それもそうだけど、『死の九番』に悟られたらまずいでしょ」
「大丈夫だよ。『死の九番』が校内の様子を把握できると言っても、その力は限定的だから。会話を聞き取ったりはできない。監視カメラレベルってところかな」
「どうして、言い切れるの?」
「このタイミングで『死の九番』が動き出したからね。会話が聞けるなら、もう少し早く行動するはずだ。だって、瑞穂さんが春から情報収集してたんだから」
今年は『死の九番』による事件が起こる年。
舞はそう考えて、進級直後から『死の九番』について尋ねまわっていた。
「聞き込んでいる内容を知れば、なんらかのアプローチがあったはずだからね。野放しにおくメリットはないよ」
「ただの怪談好きって思ってた可能性も」
「ないな。陽菜や理紗があれこほど言うくらいじゃ。常軌を逸していたのであろ?」
リンの指摘に舞が言葉を詰まらせた。
振り返ると怪談好きで済ませられるレベルではなかった気がする。
「黒マントの登場タイミングもそうだしね。話している内容が把握できるなら、もう少し僕らを泳がせておく方が得策だよ」
「なるほど。納得したわ。で、これからどうするの?」
立案については颯一の方が優れている。
それを暗に認めた形での発言だ。
食堂で颯一は由梨亜に、『死の九番』から届いたカードについて、校内新聞で取り上げる許可を求めた。
由梨亜はふたつ返事で了承。
必要なら実名を出しても構わないとまで言ってくれたが、当面は名前を伏せておくと約束。
最後に連絡先を交換して別れた。
「『死の九番』の目的は、僕らに『死の九番』を倒したと思い込ませること。それには何も起こらないのが絶対条件になる。もし校内新聞で誰かに『死の九番』からカードが届いたというニュースが流れたら」
「何らかの動きがあるかも。でも、待って。私達が新聞部や妹さんに接触しているのを、『死の九番』は知っているはずよ」
「知ってるからこそ動く可能性が高い。僕らが新聞部から接触したからね」
颯一の説明がピンとこず、舞は困った顔になる。




