【03-08】
「あの、イタズラとかじゃないんです。ちゃんと理由があって……」
「お姉さんの件だね」
「……お姉ちゃんは『死の九番』に殺されたんです。みんなそんなバカみたいな話はないとか言うけど。誰も信じてくれないけど。お姉ちゃんは殺されたんです。だから」
「だから、自分にカードが届いたという噂を流して、『死の九番』に近付こうとした」
頷く由梨亜。
「生駒さん、僕達に協力して欲しいんだ」
「協力って?」
「詳しくは話せないけど、僕達も『死の九番』を追っている。『死の九番』は君の姉さんを含め、十人の命を奪っている。絶対に許すわけにはいかない。でも悔しいけど、手掛かりすらロクに掴めていない。君の協力が必要なんだ」
どう答えるべきか迷う由梨亜に、優しく微笑むと颯一は静かに立ち上がった。
「いきなりは難しいよね。だから、協力してくれるなら連絡して欲しいんだ」
携帯番号を書いた紙をテーブルに置いて、「リン、行こう」と踵を返す。
「待って。待ってください!」
離れていく背中を慌てて呼び止めた。
「あの、ひとついいですか?」
振り向くふたりを、由梨亜が颯一を半ば睨むように見つめる。
「もし、『死の九番』を見つけたら、どうするんですか?」
「殺す」
即答したのはリンだった。
異論を許さないひと言に、由梨亜は息を飲んだ。
友人が冗談や悪ふざけで口にする言葉。
テレビドラマや漫画で聴きなれた言葉。
忌み嫌われるはずなのに、誰もが簡単に口にする言葉。
しかし、この小学生にしか見えない少女が口にした言葉は違う。
触れれば火傷するほどの冷たさがこもっている。
「殺すんですか?」
本能的な恐怖を覚えながら念を押す。
「余が殺す。あやつは人の法の外におる。であれば、そこに属する者が、そこの流儀で裁く。当然の話じゃ」
「過激な言い方しちゃったけど、それが僕達の仕事なんだ」
「解りました」
胸の前で拳を作ると、決意を込めて続ける。
「私、協力します。だから、お姉ちゃんの敵をとってください」




