【03-06】
「はい、そうですけど?」
ふたり組み。
どことなく中性的な雰囲気がある細身の少女と、小学生くらいの背丈しかない赤毛の女の子だった。
「新聞部なんだけど、話を聞かせてもらいたくて」
「え?」
由梨亜に当惑が浮かぶ。
「取材はキャンセルだって、昨日の夜に電話があったんですけど」
「あれ? 担当が変更された、って連絡したはずなんだけど?」
「そうなんですか」
由梨亜の声が跳ね上がった。
今までの陰鬱な気分が晴れたからだ。
「自己紹介が遅くなったね。常磐 颯香、二年。こっちが妹の凛子」
「リンでよい。その方が慣れておる」
「えっと、生駒 由梨亜です。よろしくお願いします」
律儀に頭を下げた。真面目な性格が垣間見える。
「色々と伺いたい点があるんだけど、時間あるかな?」
「はい。全然大丈夫です」
「じゃあ、立ち話もなんだし。食堂でいい?」
北校舎の一階、食堂まで移動した。
食堂の広さは教室の四倍くらい。
全校生徒の三割を一度にできるが、放課後となった今は閑散。
ジュースを片手に談笑するグループがふたつと、ジャージ姿で部活前の腹ごしらえをしている生徒が数人といった程度だ。
一番奥の席まで進む。
エコブームの影響で蛍光灯が消され、差し込む太陽光も少ない。やや薄暗い場所である。
その分、人も殆どいない。
数席離れたところにメガネの少女がひとり。文庫本を読んでいた。左頬に大きな湿布が貼ってある。
どうしてこんな場所で読書しているのだろうと思いつつ、由梨亜が椅子に座る。
正面の颯一達と向かい合う形になる。
「じゃあ、単刀直入に聞かせてもらうね」
颯一の確認に、由梨亜は首肯して了承を表す。
「『死の九番』からトランプが届いたというのは本当かな?」
「はい。先週の水曜に届いたんです」
「どこに? 机の中とかかな?」
「あの、家に封筒が届いてて」
「じゃあ、『死の九番』は由梨亜さんの住所を知っていたということなるね」
「え? あ、はい。そうですね。そうなると思います」
颯一の指摘に、由梨亜が視線を下に逃がしながら答える。
「なかなか怖い話だけど、警察に相談とかは?」
「警察ですか?」
由梨亜が慌てて顔を上げた。かなり動揺しているのが解る。




