【03-04】
「解ったか? 余は人間と桁違いの身体能力を持っておる」
「解ったわ。こんなトリック簡単よ」
一切耳を貸さず、屈み込んでリンの足元を探った。
「この辺にトランポリンみたいなのがあるはずよ。それを使って跳ねただけ。絶対にそう。そうに決まってるわ」
繰り返しながら、理紗は地面に這い蹲る。
その顔は血の気が引いて真っ青。
今まで培ってきた価値観に懸命にすがり付こうとしていた。
「なかなか納得せんやつじゃな。颯一、瑞と翔も見せてやれ」
※ ※ ※
「確認が取れたわ」
愛用のスマートフォンを下ろすと、理紗は軽くこめかみを押さえた。
「えっと、少し整理するわね。あなた達がこの学校に転入してきた理由は、三十年間殺人を繰り返してきた『死の九番』を倒すため。そしてこの件は警察からの正式な依頼という形になっている」
颯一が頷いて肯定を示す。
「ありえない。ありえないわ。あまりに非現実的よ。と言いたいところだけど」
力なく首を振った。
「初瀬っていう刑事さんに直接話を聞けたし、彼が本物の刑事だってことも確認できた。妹さんが超人なのも解ったし、喋る妙ちくりんな猿もトリックじゃない。女子高生相手のドッキリに、ここまで手を掛けるなんてないし。やっぱり信じるしかないのよね」
ふうっと息をついて顔を上げた。
度重なる衝撃で憔悴しきってはいるが、それでもクールな表情を作った。
「協力するわ。刑事さんからも頼まれたし。ううん。違うわね。『死の九番』みたいな殺人鬼を野放しにはできない。私は自分の意思で協力させてもらう」
「ありがとう。助かるよ」
「余からも礼を言おう。正直、手詰まっておったのだ」
「でも、私はただの女子高生。そりゃ、ちょっぴり美人だって自覚はあるけど」
肯定も否定も難しい微妙な発言だった。
颯一はどう反応すべきか戸惑ってしまう。
「今のは冗談。すぐに否定してくれないと、言ってて悲しくなるでしょ」
「あ、ごめん」
「ま、いいわ。で、さっきのふたつでいいの?」
『死の九番』からカードを受け取った人間を教える。
この件を校内新聞で大々的に取り上げる。
このふたつが颯一からの要求だった。




