【03-02】
「もういいわ。そういうの好きじゃないから」
溜息交じりで遮ると、「意外に食えない子ね」と継ぎ足した。
「ごめん。僕もこういうのは得意じゃないんだけど」
「釘を刺したんでしょ。のらりくらり逃げられると面倒だから。違う?」
「その通りじゃ」
どう答えるべきか迷う颯一をおいて、リンが肯定した。
「余らには下らぬことに時間を割いている暇はないのでな」
「リン、そんな言い方しなくても」
「そのくらいハッキリしてる方が好みよ。じゃあ、ビジネスライクにいきましょ」
ほっそりした腕を組みながら告げる。
「まず、そちらの要求を聞かせて」
「僕達の要求はふたつ。まず『死の九番』からカードを貰った人を教えて欲しい。もうひとつはこの件を校内新聞に載せて大々的に広めて欲しい」
「まずカードを貰った人については話せない。本人の了解が取れれば別だけど。もうひとつも無理ね。私は真実と断言できない物を記事にする気はないの」
「やっぱり、そう言われると思ってたんだ」
「じゃあ、何か交渉に値する情報を持ってきたってことね?」
と言いつつもその瞳には興味欠片すら浮かんでいない。
「ごめん。そういうのはないんだ。」
「は?」
余りに予想と掛け離れた回答に、理紗はポカンと口を半開きにした。
クールな彼女らしくない顔だ。
「足柄さんはそういう交渉に乗らないタイプだと思ったから」
「え、ちょっと待って。じゃあ、なんなの?」
「僕達に協力して欲しいんだ」
「協力? どういう意味?」
「そのままの意味だよ。力を貸して欲しい」
理紗は即答を避けた。
しばし思考を巡らせた後、口元に小さな笑み作る。
好奇心の後押しが滲む表情だ。
「話の持って行き方が上手いわね。いいわ。詳細を聞かせて」
「足柄さんの推測通り、僕達がここに来たのは明確な目的がある」
「それが『死の九番』ってわけ?」
「そうなんだ。これ以上、犠牲者が出ない内に、『死の九番』を倒さなければいけない」
「まるで『死の九番』というのが実在するみたいな言い回しね。あんなのただの怪談よ。どこの学校にでもある低俗な怪談話」
「この三十年で、既に十人の死者が出ている。明確な意思を持った殺人だよ」
「偶然が重なったのよ。そもそもトランプを送るだけで人を殺せると思う?」
「殺せるよ。少なくとも僕ならできる」
断言する颯一に、理紗は小さく息を飲んだ。




