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【01-06】

「向こうの学生寮に入居させてもらえることになってるんだ」

「となると、住み慣れたこの部屋ともしばしの別れだな」

「いやいや姐さん。下手すりゃ今生の別れになるかもしれやせんぜ」

 

 甲高い声が割り込んだ。

 

 対面同士の颯一とリン。

 颯一から見て左、リンだと右側になる位置に座る珍妙な生き物だった。

 体高は五十センチ弱。器用に動く指のある長い腕と、短くも力強い足。更に長い尾を持つ。

 原猿を思わせるシルエットだが頭部は犬に近い。深いダークブルーの毛が全身を覆っている。

 

「なにせ相手の力は未知数。こいつぁ危ないでやんすよ。ひひひ」

 

 鋭い牙を覗かせながら、いやらしい笑いを添える。

 

「こら、ずい。縁起でもないことを言うでない。そうならぬよう力を尽くすのが我らの役目であろうが」

 

 嗜めたのは、正面に座っていたもう一匹。

 瑞と同じような姿形だが、対照的なパールホワイトの体毛をしている。

 

「相変わらずしょうはつまんない奴でやんすね。シャレのひとつも解らねえんでやんすから」

「ご安心くだされ。我ら瑞と翔は、命に代えても兄上をお護りする所存」

 

 相方の発言を完全無視して告げる。

 

「うん。ふたりとも頼りにしているよ」

 

 笑顔で答える颯一。

 

 颯一は『鬼遣い(おにつかい)』、名門緑桜家の出自だ。

 

 鬼遣いとは、その字が表す通り、鬼と呼ばれる異形の存在を召喚、使役させる術を習得した者達である。

 鬼は人智を超えた力を持ち、彼らを自在に扱う鬼遣い達も同義だった。

 彼らは鬼を駆使し、邪悪な魔物や怪異から人々を護ってきた。

 それは科学万能の現代でも続いている。

 術師達は国からの依頼を受け、人に仇名す存在を駆逐するのだ。

 

 颯一も緑桜家の正統後継者として、幼い頃から厳しい訓練を重ねてきた。

 緑桜家から放逐された今でも、個人的なコネクションで警察に協力している。

 

「こやつらでは頼りないことこの上ないが、それでもいないよりは幾分マシであろ」

「姐さん、その言い方はあまりに酷いでやんす」

「お言葉ですが、我らとて十分に修練を積んでおります」

 

 鬼遣いには、特定の鬼を周囲に常駐させる術がある。

 これにより鬼の召喚に必要とされる複雑な儀式を行わず、鬼を遣う事ができるのだ。

 常駐する鬼の数や能力は、術者の力量に比例。

 優秀な術者は、強力な鬼を複数近くに置いている。

 

 瑞と翔は颯一の遣う鬼達。小鬼と呼ばれる最下級の部類に入る。

 卓越した力はないが、その分制御が容易だ。

 

 

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