【02-25】
「少しでも誤解が解けたなら嬉しいな。あまり知られてないけど、『鬼遣い』にも鬼との絆を大事にする術者もいるから」
しかし、そんな『鬼遣い』は極少数派。比率では数パーセントに過ぎない。
代替可能な道具考えているのが大半になる。いや、そう割り切らないと、とてもやっていけない世界なのだ。
「ふむ。待たせたな」
トレイを手にリンが席についたところで余談は終了。
話題を戻す。
「今の時点だと、黒マントが『死の九番』のはずがないというのが全員の意見だよね」
颯一の確認に、リンと舞は頷いて同意を示す。
「でも、今だからだよ。時間が経てば、黒マントが『死の九番』だと信じるようになる」
「え? どういう意味なの?」
「例えば今年、『死の九番』事件が起こらなかったらどうなるだろう?」
リンは「ほう」と小さく呟き、舞は微かに息を飲む。
リアクションに差はあれど、颯一の言いたい事は理解できた。
ふたりの反応を見つつ、颯一が話を先に進める。
「もし、事件が起こらなければ『死の九番』は、あの黒マントだと思うようになる。黒マントを倒したから事件が起こらなかったんだと」
「なるほどのう。疑心が真実に置き換わるわけじゃな」
「そうね。私達に黒マントが『死の九番』ではないという確証はないわ。事件が起きなければ、あれが『死の九番』だと信じたくなるのが人情よね」
「実はもうひとつ気になることがある。黒マントは、どうしてあのタイミングで仕掛けてきたんだろう?」
「ひとりになったところを狙ったのよ。分断した戦力を叩くのは戦術の基本。別に不思議なことじゃないでしょ」
「そうなると、『死の九番』は何らかの方法で余らの動きを把握しておることになるな」
リンの言葉に舞が周囲に視線を走らせる。
「大丈夫だよ。『死の九番』が把握できるのは校内だけだから」
「断言できる?」
「うん。学校の敷地外には何の気配もないからね。僕は攻術や防術は苦手な分、探知系の感覚には自信があるんだ。普通の術者より鋭敏なつもりだよ。実戦的でないから自慢ではできないけど」
「そんなことないわよ。人に勝る部分があるのって誇れることだし」
「瑞穂さんに、そう言ってもらえると嬉しいな」
「そ、それどういう意味?」




