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【02-07】

「事実じゃ。よいか、舞。お前が悔やむべきは、柔軟性を欠いてしまったことじゃ。颯一を敵と決め付け、裏取りを疎かにしたこと。敵の力量を見誤り、退き際を逃したことじゃ。今後の糧とするがよい。そうすれば……」

 

 反論の余地はなかった。

 素直に受け止め、もう一度、頭を下げようとしたところで。

 

「そうすれば、その貧相な乳も少しは大きくなるかもしれんぞ」

 

 ぴくりと舞の動きが止まった。

 

「なんですって?」

「貧相な乳が大きくなるかもと言ったのじゃ。まあ、かなり期待薄だがな」

「大きなお世話よ!」

 

 勢い良く立ち上がった。

 

「アンタだって似たようなもんでしょ!」

「ふん。この身体は形状が幼いだけじゃ。人間で言えば小学生くらいだからな」

 

 ぐっと喉を詰まらせる舞。そこをリンが素早く畳み込む。

 

「小学生みたいな乳だと自覚しておる点については同情してやるが」

「もう絶対に。絶対に絶対に絶対に絶対に許さない」

「ほう。そんな貧相な乳で余に勝つつもりか?」

 

 短刀をスラリと抜く舞。対するリンも拳を構える。

 双方臨戦状態。

 

「はいはい。ストップだよ。ふたりとも」

 

 呆れ全開ながらも颯一が割って入った。

 

「つまらないことで喧嘩しないでよ」

「つまらいことじゃないわよ! 女子がどれだけ悩むと思ってるの! 毎日牛乳を飲んだり! 体操したり! 少しでも大きく見えるブラを選んだり! 大変なんだから!」

 

 まくし立てる舞に気圧され、颯一は「ごめんなさい」と情けなく謝ってしまう。

 

 素直な反応に舞の怒りも少し収まる。と、はっと息を飲んだ。

 

「今、自然に話せてた」

「喚いていただけであろうが」

「う、うるさいわね。もう一回、試してみるわ」

 

 短刀を鞘に戻し、颯一を正面から見つめる。

 真剣な眼差しに、颯一も続きを待つ。

 

「アメンボ赤いなアイウエオ。浮き藻に小海老も泳いでる。柿の木栗の木カキクケコ」

「え? なに?」

「自然よ。自然だわ。私、全然普通に話せてる。ちゃんと意思疎通できてる。どういうこと? 克服できたってこと? それとも他の理由があるの?」

 

 呪詛のようにブツブツと呟く舞。

 

 どう声を掛けるべきか解らず颯一とリンは顔を見合わせる。

 大きく吐息をこぼし、リンが舞に向き直った。

 

「そんなことより『死の九番』の件じゃ。協力するのに異存はあるまいな。正直なところ、お前のみたいな未熟者に勝手に動かれると迷惑なのじゃ」

 

 


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