【02-06】
「ほら、学校にいる間、僕を女子だと思っていた間は普通に話せてたよね。今も全然変わってないはずなんだけど。どこか違うかな?」
舞が恐る恐る颯一に目を向ける。
そう言われてみると確かに。
「あの……」
意を決して、颯一に向き直ると声を掛けた。
先ほどまでの異常な緊張は薄れている。
「わ、私も『死の九番』追ってきたです。瑞穂家に因縁があるです」
そこまで話して、口元に手を当てた。
「ふ、普通に喋れてる」
「どこが普通だ。語尾が珍妙な上に、イントネーションが平坦。実に気味悪い」
「うるさいわね!」
「ところで、瑞穂さん。お互いの敵は同じ『死の九番』なんだよね。そうなると僕達は、協力できるんじゃないかな?」
いきなりの申し出に舞は面食らう。
「私、ふたりが『死の九番』だと思ってたの。だって、短期転入なんて前例がないし。何か術を施している気配があったし。ちゃんと最初に言ってくれれば……」
颯一を視界から外して、半ば言い訳に近い説明をした。
「よく言いおるな。余の言葉を聞こうせんかったくせに」
「だって、化け物を信じるなんて、そんなのできるわけないし……」
「瑞穂さん、鬼だって人間と同じで、ちゃんと心があるんだよ」
「鬼に心?」
鬼を道具として扱う『鬼遣い』とは思えない意見だ。
そんな考えが外に滲んだのだろう。
「僕はリンを道具と思ったことはないよ。いつも近くにいてくれる大切な存在なんだ」
「は、恥ずかしいことを言うでない! そんなだから一人前になれんのだ!」
微かに頬に朱を浮かべながら、後頭部を軽く叩いた。
まるで無邪気にじゃれ合う兄妹か、仲睦まじい幼馴染みたいだ。
そんなふたりに舞は心を決めた。
ベッドを下りて正座。床に額が付くまで頭を下げる。
「瑞穂さん?」
「ごめんなさい。今日は全部私が悪かったわ。鬼を殺してから、締め上げればいいと思ってた。もし『死の九番』でなくても……」
「鬼を殺すだけなら問題ないと思ったか?」
リンの問いに首肯する。
「舞よ。ハッキリ言っておくぞ。鬼斬りとして、その判断は間違っておらん。鬼は狡猾にして邪悪な存在じゃ。今後も相対する時は、下手な情を持つでない」
反射的に舞が頭を上げた。
「颯一は特別なのじゃ。こんな間抜けな術者は、まずおらん。おめでた加減だけを言えば、百年にひとりの逸材じゃろう」
「リン、それは酷すぎだよ」




