【02-02】
「隈野さんも良かったら、どうぞ」
「あ、うん」
そう答えて再び黙り込んでしまう。
一年からの付き合い。昨日まで親友と言ってもいいの関係だったはずなのに。
異次元に迷い込んだ気分だ。
陽菜が沈黙した事で、なんとも言えない微妙な空気になる。
奇妙な気配を察したのか、ジャーナリストを自称する理紗が近付いてきた。
机の上、見事な三段重に切れ長の瞳がぐぐぐっと広がる。
陽菜にとって大嫌いな相手ではあるが、この状態が続くよりはマシ。
助けを求めるように目を向けた。
陽菜の視線に対し、理紗は申し訳なさそうな表情で小さく首を振った。
そのままひと言も発さず、そそくさと離れていく。
当然と言えば当然の反応。
いや、他人になんとかしてもらおうというのが間違いだったのだ。
そう思い、いつの間にか俯いていた顔を上げる。しかし。
「はい、颯香さん。あぁんしてください。とっても美味しいですから」
ハンバーグを箸で摘まみ、極上の笑みを添える舞。
陽菜はただ戦慄するしかなった。
※ ※ ※
──九月十日(火)──
「ここは?」
目を覚ました舞は、半ば無意識に呟いた。
ぼんやりと周囲を見回す。
電気が消されているが舞は鬼斬り。夜目は利く。
狭い部屋だ。広さは五畳くらい。簡素なベッドの上だ。足の方にドア。
その対面にはカーテンの掛かった窓がある。
窓の上のエアコンに電源は入っていない。
自分の部屋でないは確か。
物音に注意しながらシーツをどける。
見慣れた学校指定のジャージ。袖と裾が余っている。サイズが大きいみたいだ。




