【01-29】
圧倒的速度で迫る舞を遮るように白い方の小鬼、翔がふわりと浮き上がった。
「小娘! 我が最強の術を食らうがいい!」
「邪魔!」
一喝と共に短刀を振るう。
その切っ先が触れる寸前。翔の身体が閃光を放った。
至近距離でカメラの大型フラッシュ以上の光量。
鬼斬りと言えど耐えられる物ではなかった。
足を止めて、目を押さえる。
その隙にリンが追いついた。
背後から襟を掴むと、背中までシャツが一気に破れるほどの勢いで後方へ投げ捨てる。
舞は空中で体勢を整え、なんとか足から着地。
ダメージはない。
直ぐに攻撃に移りたいところだが無理。
油断なく短刀を構えつつ、視界が回復するのを待つ。
その耳に鎖の落ちる音が届いた。
※ ※ ※
颯一が目を開けた。
全身がずしりと重く、意識もぼんやりしている。
「しゃきっとせい!」
頬に軽い痛みが走った。感覚が急速に覚醒する。
「リン!」
リンは血みどろだった。
特に左肩の傷が深く、シャツ全体が真っ赤に染まっている。
「余の傷は問題ない。それよりも」
リンが右手を差し出す。
そこに乗っていたのは、ぐったりした瑞だった。
余りのショックに声すら出せない颯一に気付き、重い目蓋を開く。
「へへ、見事、助けやしたぜ」
「ごめん、瑞。僕のせいで。こんな酷いことに」
「兄さんの、せいじゃ、ござんせんよ。あっしも、男っすから。ここ一番、決めねえと」
途切れ途切れに告げると、にぃと牙を見せた。
「兄さん、後は、頼みやしたぜ。ちぃと、カッコ付け、過ぎちまった、みたいで、やん……すよ……」
がっくりと力が抜けた。
「そんな、そんなのって」
「全て後回しじゃ」
冷たく告げると、瑞の身体を床に置いた。
「まずは、あやつをなんとかせねばならん」
睨み付けるリンの視線を颯一が追う。
そこにいた少女に颯一は驚きを露にする。
先ほどまでクラスメイトとして接していた相手だったからだ。
「瑞穂さん、これはどういうことかな?」
どうしても怒りで声が震えてしまう。
それでも問わないわけにはいかなかった。
敵意のこもった颯一の目を、舞は正面から受け止める。
リン達が遣り取りしている間に、視力はほぼ回復していた。




