【01-27】
舞の蹴りがリンをフェンス際まで一気に吹っ飛ばす。
立ち上がったリンは無惨な状態だった。
斬り付けられた傷が無数にでき、全身血みどろ。
息も完全に上がり、かなり消耗している。
「姐さんがマジヤバいっすよ!」
「兄上!」
翔が近く倒れている颯一に気付き、巻きついた鎖を解こうと手を伸ばす。
そこで、ばちっと痛みが走った。捕縛鎖の衝撃だ。
「こ、これは!」
「なにしてるんでやんすか! 早く兄さんを!」
「待て! 触るな!」
鎖に触れようとした瑞を制した。
「凄まじい威力だ。下手に触れると致命傷になる」
翔が手を広げる。
肉が裂け、どす黒い血液が滲んでいた。
「姐上ならなんとかできるだろうが」
リンに視線を向ける。
左肩口から袈裟懸けに斬られ、よろよろと膝をつくところであった。
「だ、ダメでやんすよ。あっちはあっちでヤバいっすから」
「万事休す、と言うことか」
「こうなったら、もう逃げるしかないでやんすね」
「仕方あるまい。そもそも我らは使役する者とされる者の関係だからな」
「あっしらは消耗品扱いでやんすよ。命までは張れませんや」
軽薄な意見を交換し、にやりと歯を見せた。
「だが、そういうわけにもいかない場合もあるか」
「ぶっちゃけ、ここ以上に待遇がいい職場は期待できないでやんすしね」
「よし。ここは我に任せろ。なんとか鎖を解いてみせよう」
「待っておくんなせいな。ここはあっしが適任でやんすよ。あのガキがこっちに気付いたら、あっしでは止められないでやんすからね」
数秒の沈黙を置き、翔が頷いて同意を表した。
「じゃあ、さっさと済ませるでやんすかね」
口調は気楽に、まずは巻きついている鎖を掴む。
凄まじい衝撃が走った。
「へへっ。こいつぁ、なかなかハードでやんすね」
歯を食いしばりながら鎖を握り直す。
衝撃の威力が跳ね上がる。
全身の皮膚が裂け、あちこちから血が噴き出した。
※ ※ ※
短刀が走り抜けた。左肩口から袈裟懸け。
リンはふらふらと数歩後ろに下がり、がっくりと膝を付いた。
右手で傷を押さえるが、溢れる血は止まる気配すらない。
もう三センチ深ければ致命傷になっていた。




