表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/141

【01-02】

                    ※ ※ ※

 

 

──九月一日(日)──

 

「ハートの九、ですか。トランプの」

 

 緑桜颯一はざくら そういちは、細い眉をひそめた。

 

 颯一は綺麗な顔立ちの少年だ。

 涼やかな瞳に、すっと通った鼻。肌も白くきめ細かい。男子にしては肩幅が狭く、胸板も薄い。

 髪も少し長めで、どことなく中性的な雰囲気を感じさせる。

 

 年齢は十六。

 表向きは隣町の公立高校に通う二年生。

 

 日曜の今日は、デニムのボトムとジャケットというラフな格好だ。

 

「物品に念を込めるという呪術はありますが」

 

 そう言いながら、カップのティをひと口含んだ。

 ハーブの香りがふわりと広がる。

 

 ここ、喫茶『ハーロック』は、古風な雰囲気が売り。

 数年前に出来た駅前のショッピングモール地下三階、少し奥まった場所にある。

 手狭な店内は艶やかなステンドグラスで彩られ、パーティション分けされたミニテーブルが七セット置かれている。

 

 レジから最も離れた窓際の席に、颯一達三人は座っていた。

 

「呪術とは対象を決めて行う物です。無差別に行える物ではありません」

「でも現実に人が何人も死んじゃってるし。その学校では『死の九番』なんて怪談にもなってるんですよ」

 

 答えたのは、颯一の対面に座っていた初瀬純はつせ じゅんだ。

 

 下がった目元に血色の悪い頬。声は高めで薄っぺらく、どことなく頼りない。

 ヨレヨレの紺色スーツにも、着られている状態だ。

 

「純さん、定期的に犠牲者が出ているんですよね」

「三年毎なんですよ。いやね、僕ら警察としてもお手上げで。ここは颯一くんに何とかしてもらいたいなぁと」

 

 颯一より八つ年上にも拘らず、どうにも甘えたような言い方になってしまう。

 

「もちろん、僕もできる限り助力したいとは思っていますけど。ね、リンはどう思う?」

「んあ?」

 

 いきなり振られ、颯一の隣に座っていた少女が珍妙なひと言を漏らした。

 

 くりっと猫っぽい目が眼前のパフェから移動する。

 小柄な颯一よりも頭ひとつは低く、まだ女の子と呼称するのが相応しいくらい。

 全体的に飾り気が薄く、衣服はハーフパンツにシンプルなシャツ。

 長く伸びた赤毛もエンジのリボンで無造作に束ねているだけだ。

 

「ふむ。なかなかひと言では答えられん問題だな」

 

 愛らしい鼻をふふんと鳴らし、形良い桃色の唇を難しそうに歪めた。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ