【01-18】
「そう、なんだ。安心したよ」
変なキャラ付けがされたが、とりあえず最悪の事態は回避できたようだ。
ほっと胸を撫で下ろし掛けたが。
「やっぱさ。家に帰ると男子っぽく振舞ったりするの?」
リンに向けてだった。
これはこれで危ない展開。颯一は内蔵を鷲掴みされた気分になる。
「ん? まあな。こやつは意外に男らしいところがある」
「リン!」
「ふふふ。照れるな、照れるな」
「へぇ、なんか意外ですね。大人しい方かと思ってたんですけど」
「人ってのは意外だよね。舞だってさ」
「え? 私ですか?」
いきなり矛先を向けられ、メガネの向こうで瞳が大きくなる。
「現実主義者っぽいけど、実はオカルトファンなんだよね」
「ちょっと止めてくださいよ」
「ほら、春から変な怪談について聞きまわってたじゃん。なんだっけな」
「も、もういいじゃないですか。」
恥ずかしそうに頬を染めて、陽菜の手首を掴む。
「その怪談って、『死の九番』でしょ」
いきなり割り込んできたひと言に、四人の視線が移動する。
背の高い細身の少女。
切れ長の瞳を持つ美人だが、どことなく冷たい顔立ちだ。
「春先はしつこく聞きまわっていたのに。最近は口にもしなくなったわね。どんな心変わりがあったのかな。ちょっと気にならない?」
「んなこと気にするのはお前くらいだよ」
陽菜の言葉には敵意が滲んでいた。
どうも快く思ってないようだ。
舞も苦手な相手なのか口を噤んで、視線を下に逸らす。
「どうにも嫌われてるみたいね。まあ、いいわ。自己紹介がまだだったわね」
颯一達に顔を向ける。
「足柄理紗よ。理紗でいいから。新聞部なの」
「ゴシップ部の間違いだろ」
「あら。私はジャーナリストとして、みんなが求める記事を書いてるだけよ」
「ありもしない噂を流すがジャーナリストってもんなのか」
「どうにも誤解があるわね。私はちゃんと取材をして、真実だけを記事にしてるつもりなんだけど。もちろん、ソフト部の件も、ね」
「証拠もないくせにあんなことを書きやがって!」
「証拠を提示した方が良かったのかな? 噂で済むように気を遣ってあげたのに?」
ぐっと陽菜が喉を詰まらせた。
セミロングの髪を軽く手で掻き揚げながら、理紗は颯一達に話を戻した。
「まあ、いいわ。実は転入生のふたりに聞きたいことがあったの。この学校、短期転入なんて前例がないのよね。何か特別な理由があるんじゃないかって思ってるんだけど?」
すうっと目を細めた。威圧感がぐっと高まる。
「理由じゃなくて、目的なのかもだけど?」




