【01-17】
「ウチも一緒に行きたいんだけど。部活の試合が近くてさ。サボれないんだよ」
「ソフト部なんだよね」
「二年で唯一のレギュラーなんだ。すっごいだろ」
ちょっぴり偉そう。
しかし、嫌味を感じさせないのは、彼女の持つ快活さ故だろう。
「それは凄いね」
「なんて、部員が十三人しかいないんだよ。どう? ソフトやってみない?」
「運動はちょっと苦手なんだ。遠慮しておくよ」
「颯一、ソフトとはなんだ?」
リンのひと言に、颯一の頬が強張る。
そのまま会話が流れる事を祈ったが。
「颯一?」
陽菜が首を傾げた。舞もきょとんとしている。
ふたりの反応に、流石のリンも失言に気付いた。
「む。ここでは颯香だったか。失念しておった。済まぬな」
そう詫びた。
悪気はないのだろう、言った後も平然としている。
微妙な沈黙。
なんとか誤魔化すべく颯一は懸命に考えを巡らせる。
だが、良いアイデアにたどり着く前に。
「颯一って、男の子の名前、ですよね」
舞が一歩進めてしまう。
「それは、あの、その、えっと」
「やっぱりね。実は薄々、解ってたんだよね」
焦る颯一に、陽菜がにぃっと人の悪い笑みを浮かべる。
解りやすいくらい、「お前の秘密を見破ったぞ」的な表情だ。
「昨日の自己紹介の時も、一人称が僕だったしさ」
「そ、そんなの言ってないよ」
どうしても声が震える。
私と呼称するよう心掛けているが、反射的に僕と言ってしまう時があるのだ。
「いえ、確かに言ってました。ちょっと変わった感じの子かなと思いましたし」
「大丈夫じゃ。言っておったぞ。余が保証してやろう」
「そんなの保証しなくていいってば!」
「ふふふ。これでハッキリしたよ! ずばり君は!」
まるで物語の名探偵が如く、陽菜はびしっと指を突きつける。
そして。
「男子願望の子でしょ!」
自信満々に言い切った。
予想の遥か上を通り過ぎていった結論。
颯一がかくんと首を傾げる。
「そうじゃないかって思ったんだよ。実はウチの部にもひとりいるんだ。君と違ってさ、一人称が俺。しかもさ、くん付けで呼ぶように強制してくんだよね」
「女子校だから、という理由ではないですけど。男の子っぽい言動をされる方もいらっしゃいますし。別に隠す必要もないですよ」
柔らかい笑顔を沿えて、舞が告げる。




