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【05-14】

「確かに数年というのは長いかも知れぬ。が、新しい母親も手に入り、復讐も果たせ、天国の母や姉も喜ぶ。最良に思えるがな」

 

 数年間の時間。

 その間、自分が欠けた部分を埋める事さえできれば、少なくとも路を外れる事にはなるまい。

 そう考えての事だ。

 

「決めるのは颯一、お前自身じゃ」

 

 颯一は答えに窮する。

 無理もない。いくら素質があっても、まだ六歳の子供なのだ。

 

「直ぐに決めるのは難しかろう。十、数える間待ってやる」

「え?」

「余も暇ではない。数え終わるまでに決めねば帰る。もう、二度とお前の前に現れん」

「そんな!」

「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ」

 

 颯一の反応を意に介さず、ハイペースに指を折っていく。

 冷静になる時間は与えない。

 

「いつつ、むっつ、ななつ、やっつ、ここのつ」

「ま、待って!」

「ん? 決まったのか?」

 

 一本だけ指を残して問う。

 最早、答えを聞くまでもない。

 

「ずっと一緒にいてくれるのか? 約束してくれるのか?」

「約束しよう。ずっと傍にいよう。お前が望む限り、永遠にな」

「ホントに、母さんになってくれるのか?」

 

 こくりと頷き、膝をついた。両腕を広げ、笑みを作る。


 言葉はいらなかった。

 飛び込んできた颯一の小さな身体を優しく包み込む。

 抱き潰さぬよう、細心の注意を払って。

 

 しばしの抱擁の後。

 

「では、颯一よ。余と誓いの儀を結ぶのじゃ」

 

『鬼遣い』は鬼を召還し使役させるのを生業としている。

 鬼が現世にいられる時間は、術者が呼び出した際の呪力に比例。逆に鬼の持つ力に反比例する。

 多くの呪力を込めるほど鬼は長く滞在し、鬼の力が強ければ強いほど早く消えてしまう。

 消えた鬼を再び召還するのは可能だが、召還の儀式は時間と術力の消費が大きい。

 その面倒な状況を回避するため、鬼を常駐させる術がある。

 

 術の本質は、「術者と鬼、双方の魂を一部繋ぎ合わせる」事にある。

 これにより鬼は術者の術力を永続的に吸収。その存在を固定化させる。

 

 やや乱暴な例で表すなら、召還による鬼の使役がバッテリー充電。

 鬼を常駐させて使役するのは、コンセントで電気を取るような物だ。

 

「術者、颯一よ。余の力を汝に預けよう」

 

 左手の小指を噛む。鋭い犬歯が皮膚を破り、血が滲んだ。

 すっと颯一に差し出す。

 

「鬼、リンよ。己が呪力を代償に汝の力を借り受ける」

 

 それを見て、颯一も懐から短刀を取り出す。

 指先を軽く切り、リンの方に向ける。

 

 互いが、相手の傷に口を付ける。

 

 

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