表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/141

【05-06】

 

                    ※ ※ ※

 

 

 西校舎裏。

 舞は制服を脱ぎ捨て下着姿になると、通学鞄の底に隠していた戦闘装束を取り出した。

 

 素材は秘伝の製法で作られる極限まで軽量化された布。

 畳めば薄く邪魔にならず、それでいて防刃効果も高い。

 デザイン的には、スピードスケートの選手が着用するような密着タイプのウエア。

 風の抵抗を極限まで抑えるように計算されている。

 

 手際よく着込み、フードに髪をしまう。

 次にスマートフォンを操作。グラウンドの様子がディスプレイに映った。

 校舎のあちこちに、小型カメラを仕込んであるのだ。

 

 西校舎裏のチャペルから校庭に出た明星は門に向かっている。

 歪んだ足を引きずるせいか歩みはかなり遅い。

 

「彼の言った通りね」

 

 敵には致命的弱点がある。

 逃げられた理由を尋ねる舞に、颯一は説明してくれた。

 

 金属製のキリスト像に比べ、人体の骨や肉は弱い。加速や力には耐えられない。また防御力も低い。

 降魔刀であれば、易々と切断できるだろう。

 問題は短刀の間合いまで、どうやって近づくか、だ。

 

 青と赤の紙札を撒いた。

 札は地面に付くと同時に膨れ上がり。巨大な化物に変わる。

 青い肌に牛の頭を持つ牛頭鬼と、赤い体色で頭部が馬の馬頭鬼だ。

 それぞれ三体ずつの計六体。

 ひとりで行動する舞の為に、実家が用意してくれた簡易召還できる鬼達である。

 

「あんた達は門側から突撃。敵の気を引いて。後方から回り込んで私が仕留める」

 

 鬼達はどんな命令にも絶対服従。首肯して了承を表す。

 

「ごめん。これしかないのよ」

 

 小さく頭を下げた。そこそこ役立つ道具。以前はそのくらいにしか考えてなかった。

 でも、今は想いが変わっている。

 

「絶対に仕留める。だから、ごめん」

 

 牛頭鬼の一頭が低く唸った。

 手にした無骨な棍棒を頭上に高々と掲げる。

 他の牛頭馬頭も、それに倣って武器を振り上げた。

 

 何を伝えたいのか、漠然とだが舞には解った気がした。

 力強く頷いて応える。

 

 牛頭達が巨体を揺らしながら、鬼達が南門の方に進んでいく。

 

 舞も反転。校舎の北側に。

 予定通り牛頭馬頭達と挟撃を狙う。

 

 愛用の短刀、降魔刀『断ち風』の柄から丸薬を三つ、口に入れた。

 ごくりと飲み込む。

 

 鼓動が急激に早くなる。体中で筋肉が熱を持ち、骨が軋む。

 視界が薄い赤に染まる。耳鳴りがぐわんぐわんと。頭痛も酷い。

 明らかに過剰摂取の症状だ。

 

「こうでもしないと勝機がないんだから」

 

 自身の身体に言い聞かせる。肉体的には正五位まで上がっているはず。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ