【05-01】
【5】
西校舎の三階。
颯一と舞は一年の教室のひとつに避難した。
「討伐隊を編成して、向かってくれるって。昼頃にはかなりの戦力がそろうわよ」
「お昼か。ちょっと厳しいね」
颯一の表情が険しくなる。
舞が鬼斬りのネットワークで増援を依頼している間に、颯一も純に連絡を取った。
交通規制を張り、職員や生徒が登校しないよう手筈を整えてもらっている。
始業時間に生徒達が集まらなければ、敵も異常を悟るだろう。
もし暴れ出されたら、甚大な被害が出るのは間違いない。
「とりあえず、今できることは全部やったわ。それより」
教室の中央。
机を周囲に寄せて作ったスペースに横たわる、小さな身体に目をやった。
傍らには、中空を睨んだまま固まっている首も置いてある。
「この事件が解決したら、私もお参りに行かせてもらうわね」
鬼ではあるが、情の通った相手。
墓ができたら足を運んでやりたいと思う。
「ごめん。何の話かな?」
「この子よ。お墓くらい作ってあげるんでしょ」
「お墓? どうしてそんな物が必要なの?」
きょとんとする颯一に、舞の感情が泡立った。
「どうしてよ! 死んだら用なしってわけ? 家族みたいなもんだったんでしょ!」
「いや、そうじゃなくて」
「そんな冷たい人間だなんて思わなかったわ! 最低よ! 最低の人間だわ!」
「違うんだって。ちょっと落ち着いて」
舞の剣幕に慌てて否定した。
「ごめん。瑞穂さんは知ってると思ってたから」
意味不明の説明に舞の苛々が積もった。
無言で睨みつける。
「ホントは、もう少し時間を開けておきたかったんだけどな」
颯一がリンの方に歩み寄った。
「鬼の生命力が強いのは知ってるよね」
「もちろんよ」
内臓を破壊されても、手足を千切られても回復する。
唯一の弱点は首。
首を胴体から切り離すと絶命するのだ。
「リンくらいになると、その回復力は桁違いなんだ。全身を粉微塵にされたとしても、数日あれば回復する。試したことはないけど、塵すら残らない状態でも時間を掛ければ元通りになるはずなんだ」
「それっておかしくない?」
身体が粉々になれば、頭もなくなっているはず。
首を切り落とせば死ぬという話と矛盾する。




