【04-21】
「こ、こいつ!」
「待て!」
手裏剣を握って、飛び出そうとする舞を一喝で制した。
「余の後ろから動くな。こやつは人の手に負える相手ではない」
「辛うじて身をかわしたか。首を落として終わらせるつもりだったが」
さっきのリン達の会話を聞いていたのか。
不敵にそう告げた。
「まあいい。どこまで耐えられるか見るのも一興というものだ」
光球が出来た。
ひとつではない。数十個ある。
「裁きの光よ」
光の刃が一斉に襲いかかった。
対するリンは残った右手を前にかざし、高重力による障壁で防ごうと試みる。
不可視の壁に阻まれ、次々と霧散していく光の刃。
砕ける際に放たれる輝きが、光の渦と化してリンを飲み込んでいく。
数秒で攻撃が止んだ。
「ほほう。なかなか粘るではないか」
リンががっくりと膝をついた。
全力を持ってしても、防ぎきれなかった。
右腕は肘の下からなくなっていた。身体中が深々と斬り裂かれ、出血のない部分を探す方が難しいくらいだ。
それでも闘志は消えない。
足に力を込め、なんとか立ち上がろうとする。
「残念だが、お前にこれ以上は構ってられん」
ひと際大きな刃を放つ。
赤髪を散らせながら、小さな頭部が飛んだ。
血を吹き上げながら、胴体が崩れ落ちる。
颯一と舞は、無惨に横たわるリンを、ただ見つめるしかなかった。
「残りは雑魚だけだな」
「ここは僕が抑える。瑞穂さんは逃げて」
はっと我に返った舞の前に、細く頼りない背中があった。
名門とは言え、肉体的には常人と変わらない『鬼遣い』。
そんな颯一が『鬼斬り』である自分の前で、恐るべき敵と対峙している。
愛用の短刀を握り直す。
不安で揺れていた青白い刀身の震えが止まる。
萎えていた心に戦意が戻った。
「それは私の台詞よ。見てなさい。あんな雑魚、一刀で斬り伏せてみせるから」




