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【04-17】

「全力で動けるのは十秒。その後、数十秒のインターバルが必要ってわけだ」

 

 ストップウオッチの画面になった携帯を見せる。

 

「お前はただの偽神にせがみに過ぎない」

 

 颯一の言葉に舞は驚きを滲ませた。

 

 偽神は、物に取り憑き災いをもたらす下級怪異の総称である。

 本来なら正八位ほどの力しか持たないが、憑代よりしろとなった物の呪力に比例して力を増すという奇妙な特性がある。

 

「強力な憑代に、この学院に蓄積された呪力。二足の下駄を履いて、粋がっているようだけど、所詮は下等な物の怪。僕にだって簡単に倒せるよ」

 

 下級怪異である偽神には、致命的な弱点がふたつ。

 憑代がなければ無力な零体である事と、憑代を破壊されれば消滅してしまう事がある。

 

「なんと無礼な! 父よ! この愚か者に裁きを!」

 

 明星が声を限りに叫んだ。

 その瞳は陶酔を越えた狂気に染まっている。

 

「いいだろう。まず、お前から罰を与えよう」

 

 颯一がちらりと舞を見た。

 合図だ。

 

 舞が床を蹴る。

 音もなくキリスト像の死角に入った。

 

 太刀を振るう。

 静かに。最速の動きで。あらん限りの呪力を乗せて。

 断ち風を放つ。

 

 必殺の一撃。

 不可視の刃がキリスト像を真っ二つに切り裂く。

 

 寸前。像が消えた。

 

「こんな見え透いた手に乗るとでも思ったか?」

 

 背後からの声。

 

 反射的に振り返った舞の目に、拳を振り上げたキリスト像が映る。

 

 全身が総毛立った。

 無惨に叩き潰されて終わり。

 儚い人生を嘆く暇すらない。

 

 だが、キリスト像は動かなかった。

 上げた手は、何故か止まったまま。

 

 不意に像の頭が揺れた。

 そのまま胴体から離れて地面に落ちる。

 

「ふむ。なかなかに見事な切れ味じゃな」

 

 リンの声に、ようやく舞が我に返った。

 

「な、なにがどうなったの?」

「簡単な話じゃ。お前の刃の軌道をな」

 

 満身創痍の身体。

 ふらふらと揺れながら、リンが近づいてくる。

 

「ちょいっと曲げてやったのじゃ」

 

 血まみれの指を、くいっと動かした。

 

 重力を操るリンであれば、断ち風の方向を変えるくらい容易なのだ。

 


 


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