表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/141

【04-16】

「ぬ!」

 

 慌てて振り返るリンの胸を蹴り飛ばした。

 胸骨と肋骨が砕け、胴体が歪む。

 

「おのれぃ! ちょろちょろと!」

 

 それでもリンは倒れない。

 ふらふらと下がりながらも、腕を薙ぐように払った。

 その動きに沿って、礼拝席が微塵に散る。

 

 キリスト像はその破壊に巻き込まれない距離を取っていた。

 

「やはりお前の力は重力か」

 

 確信に満ちた様子だった。

 

「鬼よ。お前は自分を中心に数十センチ範囲の重力を操れるのだな。そして、その力を手に集約することで、射程を延ばすことができる」

 

 それを聞いて、舞はリンと戦った時の事を思い出した。

 逃げた自分を引き寄せたの謎の力は、重力だったのだ。

 断ち風・嵐散を弾かれたのも、リンが周囲の重力を高めて叩き落したに違いない。

 

「何を喜んでおるのじゃ?」

 

 リンがにぃっと牙を覗かせる。

 

「余がお主を捻り潰すことに変わりはあるまい」

 

 虚しい強がり。舞はそう感じた。

 絶対的な速度差がある。リンでは追いつかない。

 加えて防御も無理。少々の重力など、歯牙にも掛けず攻撃してくるだろう。

 

「だからって」

 

 だからと言って諦めるわけにはいかない。

 自分は鬼斬りだ。

 怪を絶ち、魔を滅し、鬼を斬る。鬼斬りなのだ。

 

 ぐっと短刀を握り締めた。

 

 相手は自分や颯一の存在を忘れている。いや、気にもしていないのだろう。

 その驕りが隙だ。

 命を捨てて斬りかかれば、一瞬でもリンから注意を逸らすくらいは可能なはず。

 それで十分だ。

 

 動きを気取られないように断ち風の柄を捻った。

 丸薬が手に落ちる

 

「姉さん、自暴自棄はいかんでやんすよ」

 

 耳元で囁かれて驚いた。

 ちらりと視線を向けると、肩に黒い玉が乗っている。

 

「兄さんからの伝言でやんす。術力を練って、合図をしたら必殺技を撃て欲しいってことでやんすよ」

「え? 断ち風のこと?」

「名前は知らんでやんすよ。ま、兄さんに任せておけば大丈夫でやんすから」

 

 そう残すと、音もなく地面に落ちた。

 ゆっくりと颯一の方に転がっていく。

 

「こんな絶望的な状況なのに、どんな手があるってのよ」

 

 言いつつも術力を練り始める。

 できれば数十秒は時間が欲しい。

 

「どうやら悔い改める気はないようだな」

 

 キリスト像が小さく首を振った。

 

「では、終わらせるとしよう」

「下らない話でなんとか時間を稼げたみたいだね」

 

 キリスト像が颯一の方に顔を移動させた。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ