表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/141

【04-14】

「無駄ですよ。隈野さんやソフト部の人達みたいに操ることはできません。彼女は特殊な訓練を受けていますから」

 

 颯一だ。

 リンに助けられながら、身体を起こしたところだった。

 

 機先を制された形になって、明星がじりじりと後ろに下がる。

 

「先生の力は凄いと思います。術者としての才覚は、僕よりも遥かに優れています」

 

 学院の中を把握し、多くの怪異を使役する。

 また、人の自我を奪ったり、怨霊鬼を生み出す事もできる。

 正式な術を学んでもいないのに、である。

 

「でも、僕達は術者の家系に生まれ、修練を積んできました。どれほど才覚を持った相手でも、我流の術者ごときに遅れはとりません。もう終わりです」

 

 言い切った。

 最後の降伏勧告。まだ抵抗するなら、容赦なく術を撃つつもりだ。

 

「手を汚すのは余の役目じゃ。お前は下がっておれ」

 

 颯一の意図を悟ったリンが小声で告げる。

 反論を許さない強い意志がこもっていた。

 

 明星ががっくりと膝をついた。

 両手を組んで天を仰ぐ。

 

「私は、ただ学院のことを、生徒のことだけを考えてきただけなのに。父よ。どうして、私を見捨てるのですか。父よ。教えてください。私に誤りがあったのでしょうか」

 

 不意にチャペルの空気が変わった。

 湿度が上がったような。ねっとり纏わりつくような。

 えも言われぬ不快な感じだった。

 

「油断するでないぞ。どうやらお出ましのようじゃ」

 

 リンの警告に、颯一達が無言で説明を求める。

 

「才覚があっても素人に、ここまでのことができるものか。後ろで糸を引いている者がおるのだ」

 

 はっと舞が息を飲んだ。

 颯一も驚かずにはいられなかった。

 

 動き出したのだ。

 ぎぎぎっと軋んだ音を上げながら、ゆっくりと。

 チャペルの正面中央。

 十字架に掛かったキリスト像が。

 

 

                    ※ ※ ※

 

 

 床に足をついた。

 こうして立つと見上げるほどに大きい。三メートル以上ある。

 

「このような奇跡が! をを! 父よ!」

 

 明星が歓喜の声を上げた。

 

「神に仇なす愚か者共め。その怒りに触れるがよい」

 

 キリスト像の口が動き、重々しい声で告げる。

 

「ふん。随分と大きく出た物じゃな。いいであろ。余が捻り潰してくれる」

 

 進み出ようとするリンが目を見開く。

 踏み出すよりも早くキリスト像が眼前まで移動。

 腕を振り下ろしてきた。

 

 咄嗟に左腕でガードする。

 が、キリスト像の拳は前腕部を圧し折り、そのまま頭を打ち抜いた。

 頭蓋骨が砕け、首があり得ない方向に曲がる。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ