【三題噺】つまりはキリンによって最終陥落。
「深谷さぁ……なに考えてんの」
「なに、とはどういう意味だ」
「ここどこよ」
「貴様こそなにをとち狂ったか。ここは動物園だろうが、なんなら貴様の名前も教えてやろうか久瀬」
「うん俺、久瀬だねー知ってるー。加えて言えば今のは疑問じゃなくて反語だったんだけどなー」
「なんだ、言いたいことがあるなら男としてはっきり言」
「なんで和服」
「は?」
「なんで和服? てか、なんで着物? 動物園のドレスコードって基本和服だった? え、なに俺がおかしいの」
「……そんなに変か?」
「いや普通、動物園に和服着てくるとか思わないよね」
「母にデートに行くと言ったらこれを勧められたんだ」
「え、」
「ちなみに動物園に行きたいと言ったのは友人の助言からだ。可愛らしいからと」
「え、え?」
「だがすまない。動物園に着物禁止だなんて知らなかったんだ、許してくれ」
「いや、え、ちょ、とりあえず頭あげて」
「なんだ」
「つまりなに俺に可愛く見られたかったの……?」
「そういうことになるな。動物園も着物も別段興味ない」
「なんだ、そういうこと」
「飽きれたか?」
「いんや。なんかときめいた」
「そうか。なら計画通りだ」
「じゃ、動物園に興味ないなら別のところ行くか。この前言ってた映画とかどう?」
「いや、実は見たいものがある」
「ん?」
「じ、実はキリンが、見てみたくてな」
「……」
「? どうしたんだ、久瀬?」
「やば、」
「なんだ、どうして急に顔を隠すんだ久瀬」
「なんでもない、とりあえずデートなら手、繋いどく?」
とりあえずこの子を逃がしちゃだめだと思った瞬間のはなし。
三題噺として書きました。
キリン、和服、恋愛。
縛りは会話文だけで。