アレンジ特訓 8回目 3
先輩と話している間に私が下ごしらえしていた鶏がらスープ塩鍋が煮込まれてきたみたい。さぁ、好きな具を入れよっと。
「今回は鶏つくねや鶏肉、餃子なんかを入れてみました。野菜はネギやにんじん、もやしなんかを投入といったところですね」
「ちょっといい?」
そう言って真奈先輩がダシをすすり、感動のためかほおがほころぶ。
「このダシはすごいわね。どんな具材にも合うかもしれないわ」
最初から私考案のダシじゃないですけどねと苦笑いを浮かべ――
「調味料の配合とかを研究すると終わりが見えなさそうですよね。今は世の中の料理カリスマ主婦さんとかのダシの作り方を覚えてアレンジするようにって所です」
今回のこれは鍋スープ塩味を作るには? でこれだけ美味しい塩スープが作れるとわかる内容である。どんな具でも大体合うこのスープの万能さを更に盤石にするにはどうすべきかを考えてみたいと思った。
「普通ならお鍋だけでもお腹いっぱいになっちゃいそうですけど、私が今回作ったみたいに少なめの量で別のおかずと合わせてみたりする方法もあると思ってもらえれば」
そういって私はソーセージとニンジンを炒めて最後にレタスへ火を通すレタス炒めを用意する。
「こちらもどうぞ」
私にすすめられて真奈先輩が口に入れた。
「ほんのり酸っぱさがあるのね。少し香辛料も効かせているとわかるわ。塩気のあるお鍋、酸味のあるおかず。バランス良いじゃない」
結構な評価を受けたので私は喜びを隠せない。良い気分と勢いに乗ったのでデザート代わりになりそうな一品があるんですよと知らせる。
「こういうのを思いついていたんです。トマトをまず湯むき、そしてたくさんマーマレードを塗るだけ。これを冷蔵庫で4時間程冷やしてくださいね。冷えているのはこちら」
某3分番組と同じように作り置いていたものを取り出す。私はそれを先輩の前に置いた。
「これにミントの葉を乗せれば完成です」
私は後、これについて先輩から意見をもらうだけだなとドキドキしている。
「トマトの食感にマーマレードの甘み。最後の後味にミントの爽やかさも感じられて文句ない一品ね。トマトをフルーツトマトにするとまた一味違いそう」
両者とも感想を言いあった事になる。私はそれでも先輩に勝てたという気分になれなかった。
「キーマカレーきのこ入りと焼き枝豆が美味しくて。すまし汁も良かったですしね」
そういう私に先輩からの賞賛の言葉あり。
「総合的に今回は有音ちゃんの勝ちでしょ。味のバランスが相当良かったと誇って良いのよ?」
まだまだ実力不足ですと驕らない意識は大切だけど、先輩が私も更に腕を上げなきゃと思っていそうなので喜ぶべきだと判断。
「食べてもらう人のためにより良い料理を作る。うまくいきました。これからも好敵手だと思われ続けるくらいになれるよう経験を積みますから」
たかがお米とあなどるなかれ。炊きたての新米というものにはわかる人にはわかる美味しさがある。2人とも今の知識で最良の料理を作ったのだ。決め手は<新米>が引き立つかどうかだったのだろう。真奈先輩の作ったものが単純に新米じゃなくても美味しいおかずだったという事。もちろん有音の作ったおかずだって新米かそうでないかに関わらず美味しいには違いない。だけど味付けの工夫で新米の味も活かされている! という事である。『ご飯そのもの』も引き立てられていたと先輩から説明を受けて、私は狙いが上手くいったと喜んだ。




