アレンジ特訓 8回目 1
今週もまた料理研究部でアレンジ料理を作る曜日がやって来た。そろそろテスト期間だけど普段の授業をしっかり聞いて、わからない所は教科書を見返すというか読み直せば勉強時間を伸ばす必要なんてないんだよね。この考え方、珍しいって本当? 実践出来る人が少ないみたいだけど。
「ね、有音。悪いけどここを教えてくれないかな」
教室から部室へ行こうかなと通学カバンに荷物を入れて、忘れ物ないよねと確認している時に声をかけられた。
「どうしたの芽生ちゃん。ノートのそのページの道具名が出て来ないって? 今日は教科書を家に忘れちゃったから調べられない。いつもの事だけど仕方ないなもう」
しゃべり口調とかは今時の子って感じだけど、甘え上手なんだよね。世渡り上手っていうよりかは見てて危なっかしいという印象が強いかな。私に一番甘えてくる妹的存在? はいっ、改めての紹介終わり。
「コップの中にあるアイスティーとか飲み物なら何でも良いけどかき混ぜるそれがマドラーで、パン屋さんとかスーパーの揚げ物などを取るところにあるこれはトングね」
つっかえが取れてほっとした表情を見せる芽生ちゃん。困ったらまた頼りにおいでと伝えて芽生ちゃんと別れた私は部室に到着。
「どうやら今日は私の方が早く来たのかな」
料理研究部の顧問から家庭科室の鍵を借りてきた私。机の上に採れたてな食材が置かれているからこれを使うんだなと予想出来た。
「今日はちょっとだけ私の方が遅かったみたいね。ごめんね、連絡しなくて」
「気にしないで良いですよ? いつもより少し遅い程度じゃないですか」
簡単なやりとりの後、私は先輩に問いかけた。聞いたのはもちろん机の上に置いてある食材についてである。
「今日はこの場に置いてある食材を自由に使って何かを作れば良いんですね」
「そういう事。今回は作る際の参考テーマだけ出す事にしましょうか。北海道の新米に合うおかずというのだけは意識して欲しいわ」
確かに美味しい物の多い秋だから新米とおかずがお互い惹き合う関係になるのは理想的だよねとは思う。だけど、北海道産の新米にしたのはどうしてだろうと私が首をかしげているのを見られたのか先輩が教えてくれた。
「最近は北海道のお米も有名になって来てはいるわ。だけど、全国的にはまだコシヒカリとかアキタコマチ、ひとめぼれにササニシキあたりが知名度高いじゃない? それを変えるくらいの気概で挑戦してみましょうよ」
正直お米の品種で味比べなんて経験ないし、まだピンと来ていなかった。しかし、真奈先輩からタメになる豆知識を聞いて意識が変わる。
「これは授業で習う事になる話なんだけど、北海道はお米の生産量第2位なのよ。数年に渡ってね。意外だと思うわよね?」
私は先輩から1年生の予習『お米について』の講義を受ける。12月前後に習う予定の話みたいなので助かるし、その内容には驚きもあった。




