有音の親友に出来ること 4.
すでに親友の家の門前まで来ていた。ここまで来てまだ奏がごねているけど本気じゃないだろう。
「有音、待って。本当に会うの~!?」
「鈴歌の事、心配だもん! 確かめるのが一番」
まあ、ごねているというより鈴歌の家が大きいから気後れしているのかも、奏ったら。私もこんな立派な家の子が一般家庭の私と仲良くしてくれるなんてと驚いた経験があるからわかるけどさ。
「包味です、こんにちは」
インターホンを押して挨拶すると、結構すぐに鈴歌の母親が応対に出てきた。
「まあ。有音ちゃんじゃない! なつかしいわ~」
マダムという表現がしっくり来る鈴歌の母親に、私は笑顔で用件を伝える。
「鈴歌に用事があって。鈴歌いますか? ほら、奏は初めましてでしょ」
「こ……こんにちは」
奏がこの家に来たのは初めてだけど、どうやら鈴歌の母親は小学校の時のイベントで有音ちゃんと良く一緒にいた男の子でしょと思い当たったらしい。
だからか気さくな感じになった鈴歌の母親が食事していかないかと誘ってくれた。
「お腹すいてきた時間じゃないかしら! あなた達も一緒に夕飯はいかが?」
別に食べたくないとかではないが、私達はまだその時間でもないので少し戸惑う。
「え?」
「今から夕飯?」
世間話のように鈴歌の状態を話す鈴歌の母親。
「あのね、最近あの子調子崩しているみたいだし……今日だけこの時間にどうにか来てもらったのよ」
案内してもらったキッチンにメディアなどで目立ちだしているイタリアン料理人がいたので、驚いた奏が叫んだ。
「あの人、新田鋼さん!!」
奏の大声を聞いた私も有名プロ料理人がこの場《鈴歌の家》という事実に興奮する。
「"期待の新星"って呼ばれているイタリア料理の天才シェフと呼ばれだしているあの!?」
そんな人に会えるなんてという嬉しさで私は伝えたい事を口に出してしまっていた。
「うそ!? 私、ファンで!! 最近テレビで観たツナと水菜のパスタ、真似して作ってみました!!」
「それを僕に作らせたのはどこの誰……」
奏がこれ以上余計な事を言わないよう視線で黙らせる。
場の雰囲気が重くなる前に新田シェフから笑顔で食事を同席されてはと誘われたので私達は明るく返事をした。
「まあまあ。今日はご友人方もゆっくりお召し上がり下さい」
「はい!」




