有音の親友に出来ること 3
「ありがとうだって……素敵な子だな~」
小太り君と角刈り君が恨みがまそうにしていたが、僕には何故なのかわからなかった。
友達と別れた僕はまた彼女の姿を見たくなって約30分後に再びグラウンドに戻ってきていた。そこで幼なじみの有音に肩を叩かれる。
「あれ~、奏。覗くような見方じゃなくて堂々と見たら?」
「うわっ」
あらぬ噂をされそうな言い方をする意地悪な有音に適切な返事を返せない。僕はこの場を乗りきる正しい選択肢を考え続けてしまっていた。
「あ……有音!? ちがっ……だから……」
僕が見ていた方を見つめる有音。
「私の親友のピンチを助ける手伝いを求めている時に! 誰見てたのかなどれどれ~?」
やっとの事で僕は否定の言葉を発する。
「違うよ~、理由があって」
「奏はどの娘を見てたの~? あっ、鈴歌じゃないの!? 奏、鈴歌の事を覗いてたんだ?」
僕は有音があの美人と仲良いのかと気づいて偶然だとバレないよう話を合わせた。
「有音、あの子と友達とか!?」
「小学校からの付き合いってやつよ! それはそうと覗くように見てたのは……ムッツリ!!」
軽蔑の視線を浴びせられてしまっていた。少しでも違う考えを持ってくれないかなと訴える。
「違うんだってば!!」
まだ僕を追求したそうな有音だったが、陸上部の顧問の声にそっちの方を注目する。
「タイムが伸びるどころか……遅くなってしまっているな。一ヶ月後にはオリンピックをかけた重要な大会があるんだぞ。どうしたというんだ?」
「鈴歌……!?」
有音が心配そうにしていたので、少し前から陸上部を見学している間に入ってきた情報を教えた。
「ここ10日くらい前から早まるべきタイムが遅くなってしまっているらしいんだよ……」
まだこの場を去れずに様子を見ている僕。有音の「スランプとか……?」というつぶやきにも否定出来ずにいた。どうも上の空というか、無気力に陥っていそうな様子で顔色が良くない点から体調不良かもと考える。
◇
~有音サイド~
どんな形にしても奏が鈴歌と知りあった形なのは都合が良い。私が手助けしてあげたいのはさっきの子なんだよと一緒に下校する際、話した。
そして翌日――
鈴歌が心配でいてもたってもいられなかったので私は奏を誘って彼女の家に向かうと告げる。奏はそこまでしなくてもという感じだったけど、それくらいしないとダメな気がすると丸め込んで少々強引に連れて来た。




