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有音が目撃した奏の成長 3

 無意識に奏が手を握った時、手に痛みが走る。手がボロボロになっていた。

(何で母さんが倒れる事に。一体何が原因だったのか!?)

 悔しくて座り込み自分のしている事が無意味に思えてくる奏。

「何してんだ……僕……わかんねーよ、ちくしょーっ!! ちくしょう……わけわかんなく……)


                ◇            ◇

 奏の家は家庭の事情で2人っきりだったなと思い、だから彼は学校を欠席して母親の看病をしていたのだろうと推測する。一人じゃ大変かなと思って差し入れを渡しに行ったところ――

「こんにちは~。どお? 助けは必要かな? 差し入れもあるんだけど……」

 声をかけても返事がなかったが、台所に人影が見えたので「失礼します」と挨拶して直接そこへ向かう。

「あ……有音……!?」

 そこで彼女が見たものは――

「あっ」

 悔し涙を流している奏が手で涙をぬぐっているところを目撃してしまった。

「これ……焼きそばサンド。私の手作りだから自信ないけど」

 きっと今は顔を見られたくないだろうなと気を使って目をそらしつつも有音は何か声をかけてあげたいと「あの……」と声を発したらその前にお礼を言われる。

「ありがとうね、有音……」

 

 いたたまれなくなって有音は奏に押し付ける感じでバスケットケースを手渡す。

「わ……私、おばさんの看病してくるから!!」


 その時の有音は今までに見覚えのない悔しそうに涙まで流す奏の様子に内心驚いていたのだ。


「おいおい……軽く焼きそば作ってハサむだけなのにさ……」

 ホットドック用パンから少しはみ出ている焼きそばを見て軽く嫌味を言いながらも、有音の気持ちがこの差し入れに込められているのがわかってとても胸に響いた。

「柄にもないのに……」

 自分は何をやっていたのか、有音にまで心配を……それに学校の調理実習で先生から今まで教えてきた生徒の中で一番料理うまいなんて言われてたっけと思い出していた。今度は悔し涙じゃなくて感動の涙を流しながら『大好きなおじいちゃんの自尊心プライドも守れないのか』とさっきと違う事を考えながら有音の焼きそばドックにかぶりついたところ――


 奏は舌からの情報量の多さにひざをつく。何だか疲労が体を支配している。でも何かを感じ取ったのであった。

「そうか……わかった!! 感じ取ったよ!! "料理の希望"を!!」

 有音と自分の母親に彼はこれからしようとしている事を宣言する。

「今度はもっと良い丼を作るから!!」

 その時の奏の様子を見て、有音は彼に違いを見出す。とてつもないモノを見せてもらえそうとも思っていた。

「僕に任せてくれちゃって良いからさ」



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